自己紹介にもどる 最終更新日:平成29年02月01日

視野領域と視覚誘導性自己運動感覚 (Vection) について

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このページについて

 このページは,視覚誘導性自己運動感覚 (Vection) について研究している際に有用だと考えられる文書や知見,論文などをまとめたページです.
 このページに書く内容は,私が研究を通して得た知見であり,多少,厳密性を欠いた表現を含むかもしれません. また,このページではVectionの中でも特にLinear Vection (視覚誘導性自己直線運動感覚)に着目していますので, Circular Vection (視覚誘導性自己回転運動感覚)については触れていない部分もあります.
 なお,ページの最下部には参考文献を載せています.CiNiiに当該論文が存在するものに関しては,CiNiiへのリンクも用意しましたので,皆様の研究・調査に少しでもお役立ち頂ければ幸いです.

Key words: 視覚誘導性自己運動感覚(ベクション,ヴェクション,Vection),周辺視領域,中心視領域,視野角,視覚刺激

まえがき

 私は,周辺視刺激(人間の視野における外側に提示された視覚刺激)がVectionに与える影響について分析してきました.
 人間の視覚特性としては,中心視領域(人間の視野における中心の部分)と周辺視刺激(人間の視野における, 中心視領域を除いた部分,すなわち外側)の役割は異なっており,それぞれの領域がVectionの強度 (動いているかのように感じられる強さ)に与える影響も違うことが分かってきました. そこで,筆者は観察視野とVectionについて分析を行っている先行研究を探し,様々な知見を得ました.
 数多くの先行研究では,観察視野角を制限した状態で視覚刺激を観察した場合にVectionの強度が弱まる傾向や, そもそもVectionが発生しにくくなることを示していました[1][2]

 この様に,従来の研究では,視野角(視野の広さ)がVectionに与える影響について分析していました[1-4]. 視野の広さとは,すなわち,中心視領域と周辺視領域の複合領域であると言えます. つまり,十分に観察視野角が広い場合,中心視領域と周辺視領域の複合領域が視覚刺激の観察領域になっていると言え, 視野角を制限した場合は,中心視領域のみ,または中心視領域と狭い周辺視領域が視覚刺激の観察領域になっているとそれぞれ言い換えられます. したがって,Vectionの従来の研究[1-4]では,視覚刺激の観察視野角が広いほど, すなわち観察視野角に周辺視領域が含まれるほどVectionの強度が増すことを示しています. しかしながら,従来の研究では,周辺視領域がVectionに対し大きな影響を及ぼすことを示している一方で, 周辺視領域のみがVectionに与える純粋な影響については検討がほとんどなされていないのが現状です.
 もちろん,周辺視領域のみが与える影響を分析した先行研究もあるのですが[5][6], これらの研究で使用されている視覚刺激提示面(視覚刺激を提示するためのディスプレイ)の視野角は十分な大きさとは言いがたくi, ii, 周辺視領域全体に視覚刺激を提示しているとは言えませんでした.
 つまり,周辺視領域がVectionに与える影響を分析を行う上では,広範な周辺視領域全体に視覚刺激を提示することができる,例えばCAVE[7]のような没入型ディスプレイを利用してVectionの研究を行うことが望まれるのです.

視覚誘導性自己運動感覚 (Vection) とは

 視覚誘導性自己運動感覚(ベクション;Vection)とは,一定方向に運動する視覚パターンを観察した場合に, 観察者がその逆方向に運動しているかのように知覚する錯覚現象,およびその感覚のことを言います.
 例えば,止まっている電車の中で,向かい側を走る電車を窓越しに観察した場合に,あたかも自分の乗っている電車が動いているように感じることがあります. また,風で流れている雲の間に見える月がまるで動いているように見えることもあります. このような,動いているものに引き起こされる,逆方向の動きの印象のことを誘導運動,または誘導性運動と呼び, 視覚によって引き起こされるこの感覚を誘導性運動感覚と呼びます. この誘導性運動感覚のうち,特に自分が動いているかのように感じられる場合を誘導性自己運動感覚と呼びます. 一般に,視覚のみによって引き起こされる誘導性自己運動感覚を視覚誘導性自己運動感覚 (Vection) と呼び,これは広く研究の対象となっています.

Vectionと視野領域(中心視領域と周辺視領域)

 Vectionの先行研究においては,人間の視覚特性とVectionの関係について分析したものがあります. 例えば,Johansson[8]はVectionの発生には中心視領域よりも周辺視領域における視覚刺激が有効であることを示しています. また,畑田ら[2]は,視覚刺激がもたらす身体の傾きの感じ方を指標として,中心視領域と周辺視野領域の機能差について分析を行っており, 網膜中心部は,低速な運動に対する感度が高く,網膜周辺部は高速運動に対する感度が高いことを示しています. さらに,早福[9]は中心視領域よりも周辺視領域の方が物体運動における反応時間が長いことを,山岸ら[10]は周辺視領域は中心視領域と比較して運動の知覚に優位であることをそれぞれ示しています.
 これらのように,人間の視覚特性として中心視領域と周辺視領域は速度感覚や運動感覚の認知における役割が異なっており, Vectionの研究を行う際には,中心視領域と周辺視領域を意識して分析するべきです. しかしながら,中心視領域と周辺視領域の一般的な定義については定められておらず,具体的な指標が無いのが現状です.

 そこで,私は研究において,中心視領域と周辺視領域をそれぞれ以下のように定義し,区別して用いました.

 ここで,人間の最大視野角は水平方向に約200°,垂直方向に約125°(上50°,下75°)とされており[11], 水平方向,垂直方向における中心視領域と周辺視領域の模式図はそれぞれ図1, 2の様になります.

水平方向における視野領域
垂直方向における視野領域
図1 水平方向における視野領域
図2 垂直方向における視野領域

 多少話が前後しますが,私の研究では周辺視領域がVectionに与える影響について着目して実験,分析を行いました. 周辺視領域が与える影響を確認するためには,周辺視領域全域に視覚刺激を提示する必要があります. 瀬川ら[5]や岡野ら[6]は中心視領域にマスク領域を設け,周辺視領域がVectionに与える影響について分析を試みていますが, いずれも視覚刺激の提示面の最大観察視野角が狭くi, ii,周辺視領域がVectionに与える影響の分析としての検討が十分であったとは言いがたいです.
 したがって,私の研究意義として,広視野な視覚刺激提示面を利用すること,具体的には,全天周型ディスプレイを利用することによって,周辺視領域がVectionに与える影響について分析することが挙げられます.

脚注

参考文献

※本項のリンク先は,国立情報学研究所が行っているサービス「CiNii」が提供する,それぞれの論文のURLとなっています.
※本リンクはCiNii全般 - 著作権とリンクに基づいて設置しています.

筆者の論文

※立命館大学 情報理工学部*1,立命館大学大学院 情報理工学研究科*2,立命館大学 総合科学技術研究機構*3
※筆頭著者論文のみ掲載.すべての業績は 研究業績リスト でご確認ください.


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