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O plus E誌 2000年2月号掲載
 
 
『ファンタジア/2000』
 
 
Disney @ All rights reserved.
       
      (1999/12/21 東京アイマックスシアター)  
         
     
  60年ぶりのディズニーの夢の再現  
   これぞウォルト・ディズニーの夢!大きなIMAXスクリーンに展開する「色彩 ・サウンド・動画の融合」はまさに映画芸術の極限であり,至福の時を与えてくれる。アクション,ラブロマンスとは全く別 次元で楽しむ作品である。
 1940年にディズニーが情熱を傾けて製作した『ファンタジア』は,アニメーションとクラシック音楽を組み合わせた8編のオムニバス作品である。映画史には,初めてステレオ録音された作品としてその名を留めている。ディズニーは毎年ニューバージョンを作るつもりでいたというが,大きく膨らんだ製作費をなかなか回収できなかったため,この計画も見送りとなった。この伝説の名作は,大がかりな修復作業を経て1991年に復活し,ホームビデオ市場で大ヒットした。以来9年をかけて最新ディジタル技術で新作品が製作され,大スクリーンに60年振りのディズニーの夢が再現した。
 35mm版での一般劇場公開も予定されているが,2000年1月1日から5月7日まで,世界15ヶ国,70館のIMAXシアターで先行公開されている。日本では,東京,大阪,札幌,穂高の4ケ所のみだが,一般 劇場やホームビデオではなく,無理をしてでもIMAXの大スクリーンで観ることをお勧めする
 なかなか完成フィルムが入って来ず,試写会は公開直前まで行われなかった。IMAX映画となると一般 上映を止めて試写するしか場所がないので,マスコミ用試写会も2回に限られた。日頃空席が目立つ東京アイマックス・シアターもこの日ばかりは満席で,19:00開演を前に,その熱気はSIGGRAPHのエレクトロニック・シアターのようであった。(正興業も開館以来の大盛況のようである。)
 
   
  音楽と映像の完全マッチ  
   1940年版と同様こちらも8編のオムニバス作品で,旧作中で最も評判の高かった「魔法使いの弟子」が,レオポルド・ストコフスキー指揮の音楽とともに再録されている。残る新作7編の演奏は,ジェームス・レバイン指揮のシカゴ交響楽団。「3大テノール競演」で指揮しているモジャモジャ頭のあのオジサンである。では,1編づつ振り返ってみよう。
  1. ベートーベン「交響曲第5番」:荘厳,重厚で仰々しいと思っていた「運命」も,パステル調のアニメと組み合わせると,驚くほど可愛く繊細に聞こえる。手書きアニメのタッチだが,折り紙状の蝶が無数に舞う様はCGで生したに違いない。オープニングに相応しいこの軽やかな佳作の終わりに,思わずエレクトロニック・シアターのように拍手をしかかった。筆者がすれば,劇場全体もそうしたかも知れない。
  2. レスビーギ「ローマの松」:映像はローマにも松にも関係なく,ザトウクジラの飛翔がテーマになっている。超新星の爆発とともに空に飛び上がるクジラのCG映像は圧巻である。これは是非3D映像で見たかったが,この部分だけ液晶シャッタ眼鏡着用というわけには行かないだろう。残念だ。
  3. ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」:冒頭のクラリネットと線描の動きはまさに芸術。風刺漫画家A・ハーシュフェルドのスタイルで描いた1930年代のマンハッタンとガーシュインの傑作とのマッチングは素晴らしく,音楽に合わせて映像を作れる自由度が最高に生きていた。最も印象に残った1編で,帰途もこの曲が耳から離れなかった。
  4. ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番」:アンデルセン童話「スズの兵隊」が題材で,『トイ・ストーリー』調の3D-CGでオモチャの兵隊が描かれている。このテーマに合う曲を探したというだけあって,音楽も可憐でハイセンスだ。情操教育に熱心なママが子供に見させたい聴かせたい作品のベスト1だろう。
  5. サン=サーンス「動物の謝肉祭」:フラミンゴとヨーヨーという奇想天外な組み合わせで描くカラフルなドタバタ・アニメ。1分54秒は8編中最も短いが,後半に向けての口直しのアクセントとして面 白かった。
  6. デュカ「魔法使いの弟子」:ミッキー・マウスの最高傑作として名高いこの1編は,再録しない方が良かったのではないか。今回再度修復されたというが,IMAXの大スクリーンには粒子の粗さ,画質の劣化が目立ち,見ているのも辛かった。多数の箒もミッキーの動きも,今ならもっと豊かに描けるのにと思ってしまう。とかく年配の映画評論家は往年の名作を誉めそやすが,最近のディズニー・アニメを見慣れた若い世代には通 じまい。
  7. エルガー「威風堂々」:ミッキー&ストコフスキー組からドナルド&レバイン組にバトンタッチされたこの作品は「ノアの方舟」がテーマである。多数の動物のアニメーションには,『ライオン・キング』以降の技術進歩が遺憾なく発揮されている。1940年版の「交響曲第六番/田園」と比べて見るとその差が実感できる。
  8. ストラヴィンスキー「火の鳥」:「死と再生」をテーマに,森の妖精,オオジカ,火の鳥が壮大なファンタジーを織りなす。宮崎アニメの影響も感じさせる映像も音楽も迫力満点で,エンディングとはかくあるべしの見本のような傑作である。新千年紀の幕開けに相応しい雄大な気分にさせてくれる。
 
     
  この10年の進歩が如実に  
   全編75分は1940年版の117分に比べるとかなり短い。通 常のIMAX作品は40〜50分だから,その倍近くはあるのだが,もっと見たかった,せめて90分は欲しかったなと感じられた。
 8編全体では,映像はセルアニメ調が中心ながら,アニメーションのタッチは多彩 で,随所に3D-CGならではの表現が見られる。しかしながら,構想から9年かかったためか,『バグズ・ライフ』(1998)や『ターザン』(1999)に見られる最新技術までは使われていない。それでも,1990年代の急激な映像制作技術の進歩が十分この作品に活かされている。2000年にこの映画を見ることができた我々は幸せと言えるだろう。
 筆者の子供の頃,『眠れる森の美女』は最後のディズニー・アニメと言われた。人件費が高騰して,二度とこれだけのクオリティの作品は作れないと考えられたのである。言うまでもなく,これを解決したのはコンピュータ技術である。製作時間を短縮しただけでなく,CGは映像表現力を一変させた。実際この10年,ウォルト・ディズニー映画は驚くほどのハイペースでアニメ作品を作り続けている。
 アニメーションはDisney Feature Animationの担当で,直接この映画にはPixar社は参加していない。前述のように「スズの兵隊」が近いタッチだが,他でももっとトイ・ストーリー調の3D-CGを多用してもよかったのにと思う。あるいは人工的な描画だけでなく,美しい自然風景画像をバックにCGを合成する方法も「ファンタジア」のイメージを損なうものではないだろう。こうした企画を考えるだけで楽しいものである。この映画を観た後,美大やCG専門学校では,きっとファンタジア流卒業作品がいくつも出てくるに違いない。
 『ファンタジア/2000』は,いい意味でのディズニーらしさを評価してをつけたが,唯一難をいえば,東京アイマックス・シアターの音響効果 は悪すぎる。以前からこの欠点が気になっていたが,この作品では特にそれを顕著に感じた。同じソニーの経営ながら,NYのIMAXシアターの音はずっと良く,サンフランシスコのMetreonはさらに上である。いっそ海外旅行先でこの映画を見るのも一興だろう。
 
  Dr. SPIDER)  
   
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