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O plus E誌 2008年10月号掲載
 
 
 
パコと魔法の絵本』
(東宝配給)
 
      (C) 2008 「パコと魔法の絵本」製作委員会  
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [9月13日より有楽座ほか全国東宝系にて公開中]   2008年8月21日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  色鮮やかな意欲作だが,皆さん肩に力が入り過ぎ  
 

 題名からすぐ分かるように,少女を主人公にしたお伽噺である。動物たちは登場するが,それは絵本の世界の中だけで,その絵本を毎日読んでいる少女と病院内の人物達が織りなす物語がメインである。
 アニメではなく,実写映画である。ただし,CG/VFXは結構出て来るようだ。スチル写真を観ると,可愛い天使のような女の子が写っていて,絵本を眺めている。極彩色を多用した場面が少なくないが,少年少女向けの映画なら,あり得る色使いだ。すばり,この色彩感覚で『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』(08年2月号)を思い出す。

 
   洋画ではなく,これは邦画である。えっ,そうだったのかと思って,他のスチルを熟視すると,主人公以外は確かに日本人俳優のようだ。メガホンをとっているのは,『嫌われ松子の一生』(06)の中島哲也監督だった。なるほど,この監督なら,カラフルで奇抜な展開の映画は得意なはずだ。元々舞台劇として上演されていたと聞いたが,後藤ひろひと原作の『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』と題した劇があり,その映画化に際して,口当たりのいい題に変えたようだ。
 この題からは,欧米の児童文学書が元で,それをイギリスかフランスで映画化したものと想像してしまう。『チャーリーとチョコレート工場』(05年9月号)や『アーサーとミニモイの不思議な国』(07年9月号)を思い出すからだろう。製作サイドもそれを狙ったのかも知れない。面白ければ,邦画だって一向に構わない。
 主人公パコを演じるアヤカ・ウィルソンは,父がカナダ人,母が日本人のハーフで,映画初出演である。助演陣には,役所広司,妻夫木聡,土屋アンナ,阿部サダヲ,加瀬亮,小池栄子,劇団ひとり,山内圭哉,國村隼,上川隆也といった名前が並んでいる。ファミリー向けの作品としては,かなり豪華な顔ぶれだ。その半面,この面々が果たして童話向きなのか,気になるところだ。
 何よりも筆者の目を引いたのは,「映画のクライマックスで役者たちを 3DのフルCGキャラクターに変身させ,そのCGキャラと役者の生の演技をカットバックさせながらストーリーを盛り上げる」という下りである。これは,当欄としては見逃せない。9月号に間に合わなかったが,紹介せずに済ます訳には行かない。
 ストーリーは,一代で財をなしたワガママ放題の老人・大貫(役所広司)が,病院内で1日しか記憶がもたない少女・パコと出会い,人生を省みる物語である。この病院には,「大人の俳優に脱皮できない元有名子役」「消防車に轢かれたマヌケな消防士」「銃で撃たれて入院している傷だらけのヤクザ」がいるかと思えば,「ピーターパン気取りの医者」や「言葉使いが悪いタトゥーを入れた看護婦」も負けじと存在感を発揮する奇妙な場所である。なるほど,この個性的な登場人物たちを描くには,まっとうな色彩感覚や衣装は似つかわしくない。
 CG/VFXはといえば,パコが読んでいる絵本の登場キャラたち,「ガマ王子」「ザリガニ魔人」「沼エビの魔女」「アメンボ家来」「ガマ姫」等がしっかりCGで描かれていて,絵本の物語を形成している。そして,病院内の連中がそのキャラを演じる劇中劇がこの映画のウリだ。CGキャラと生身の俳優が交互に入れ替わる。カット数は多いが,VFXの品質としては,可もなく不可もないレベルだ。大きな欠点はないが,「日本の劇場用長編映画では史上初」と騒ぐほどのものでもない。  
 
   役所広司をはじめ,各俳優の演技は,いずれも熱演の部類に入る。何よりも,主演の女の子の天真爛漫さがいい。監督も美術班もメイク班も全力投球で,気合いが入っていることも伝わってくる。親子連れは十分楽しんでいたから,物語自体は合格点と評価できるのだろう。
 それでいて,筆者には何かしっくり来ない感が残った。熱演であるがゆえの不自然さとでも言おうか。見慣れた日本人俳優が慣れないお伽噺を演じている。この映画を少しでも楽しく見せようと,監督も俳優も肩に力が入り過ぎている。そのわざとらしさに,観ている側が少し気恥ずかしさを感じてしまう。まるで我が子の学芸会を見ている親のような気分だ。いっそ,全く無名の芸達者たちを使った方が良かったのではないかと思う。
 
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