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O plus E誌 非掲載
 
 
 
トランスフォーマー/リベンジ』
(ドリームワークス映画
&パラマウント映画)
 
  (C) 2008 DreamWorks LLC and Paramount Pictures.
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月20日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2009年6月19日 TOHOシネマズ二条  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  過ぎたるは及ばざるがごとし,やり過ぎは嫌われる  
 

 少し覚悟を決めて映画館に向かった。6月19日金曜日の夜のことである。北米が6月24日公開なのに,日本では20日に世界最速公開という触れ込みだった。日本のタカラトミーが発売するロボット玩具がもとなので,敬意を示すと同時に,世界第2位の市場をより大きくしておこうという目論見なのだろう。その世界最速がいつの間にか,主要都市の映画館ではさらに前日からの先行上映となっていた。早くても中身が良くなる訳はないのだが,マニアックな映画ゆえに少しでもファン心理を煽り,劇場に脚を運ばせようという魂胆だ。どんな観客が初日から観に行き,どんな感想を漏らすのかが知りたくて,初日の夜のシネコンの大きなシアターを選んだ。
 予想通り,観客は若い男性集団が圧倒的で,若いカップルもそこそこいた。勿論,中高年女性は皆無だった。夜8時からの回のためか子供もいない。前作『トランスフォーマー』(07年8月号)の製作費は約1億5千万ドルだったが,本作ではその倍をかけたという。こんなに観客セグメントが狭いのに,そこまで投じて回収できるのかと,他人事ながら心配になる。
 映画を観るのに覚悟と決めたというのは少し大仰だが,冷静かつ客観的にストーリーを分析し,CGの出来ばかりに目を奪われないでいようという意味である。駄作であっても馬鹿にしてはいけない,好みに合わなくても偏った見方をしないでおこう,という自分への事前の戒めでもあった。マスコミ用試写会だと割りと醒めた目で観られて,その映画ジャンルなりの評価が下せる。ところが,入場料を払って映画館で観ると,途端に評価が厳しくなりがちである。周りの観客の熱中ぶりや白けぶりが肌で伝わってくるためかと思う。
 前作は,CG的には驚くべき作品だった。2万点以上のパーツからなるメカ(クルマやヘリ等)が,ものすごいスピードで変形・変身する様は圧巻だった。これをカッコイイと感じる若者が沢山いるであろうことも容易に想像できた。ただし,宇宙から来たロボットたち,正邪両軍のクライマックスの市街戦は長過ぎた。これでもかこれでもかの波状攻撃はくどくて辟易した。人間とメカの友情が芽生える下りは,クサくて呆れ返った。それでも,メガヒットとなった要因は肌で感じられた。
 といったところで,第2作目には以下のような予想を立てていた。CG/VFXは一段とパワーアップしているだろう。あのメカの変形手法が大きく変わる訳はないから,きっと新たな多彩なメカが登場し,その変形を楽しませてくれることだろう。「リベンジ」なる表題から想像するに,地球と人間を滅ぼそうとする「ディセプティコンズ」の逆襲が中心と思われる。悪が最後まではびこる訳はないから,人間との共生をめざす「オートボッツ」や主人公たちの活躍で定番の平和な結末を迎えるに違いない。そこに至るまでは,懲りずに倍増したアクションが延々と続くことだろう。物語性は希薄で,とってつけたようなヒューマニズムが描いてあったり,続編(第3作目)に繋がる伏線がちりばめられているはずだ。
 製作総指揮スティーヴン・スピルバーグ,監督マイケル・ベイは同じだが,ベイ監督は製作総指揮にも名を連ねている。地球を救った主人公のサム(シャイア・ラブーフ)はあれから2年経って18歳になり,恋人のミカエラ(ミーガン・フォックス)と離れて,新しい大学生活を送ろうとしていた。両親や政府高官など,主要登場人物も前作と同じだ。強いて言えば,組織解散のため既に政府を解雇されたが,今なお私的組織NESTを率いてディセプティコンズ掃討作戦を実行するシモンズ捜査官(ジョン・タトゥーロ)の活躍が目立っていた。
 続編の進行は,驚くほど予想通りだった。サムの大学生活を描く導入部はわずかで,すぐさまロボット達の激しい戦いが展開する。物語はあってなきようなもので,次々と危機が訪れ,過去の秘密が解き明かされ,やがて一段と大きな敵との戦いが始まる……。
 前作でカッコイイと感じたメカの変形シーンは,もはやCG 的に新味はなく,ただただ騒々しかった。視覚的にも聴覚的にもである。なるほど,数年前のCGで表現されてクリーチャーと比べると,圧倒的な複雑さである(写真1)。ある時はクルマであり,それがロボットに変身するという設定もあちこちで巧みで使われている(写真2)。ある意味ではすごいが,後世この映画を観た時,本当にそう感じるかは大いに疑問だ。なぜなら,コンピュータの処理時間の高速化のみに頼って得た結果でからである。それなら,今後もっと斬新なシーンが登場し,この程度の変身は珍しくも何ともなくなっているだろう。

 
   
 
写真1 オートボットのリーダー格のオプティマス。堂々たる体躯は威厳すら感じられる。
 
   
 
 
 
写真2 主人公のサムの守護者であり親友のバンブルビー(上)。
クルマに変身すると,GMご自慢のシボレー・カマロZ28コンセプトモデルで登場する(下)。
 
   
   VFX担当は前作と同様に,ILMとデジタル・ドメインだ。前者が約300人,後者が約200人の精鋭を本作品に投入している。ILMはほぼ同じ時期に『スター・トレック』(08年6月号)『ターミネーター4』(同7月号)の膨大なVFX制作を進行させ,DDは『G. I. ジョー』(09)や『2012』(09)なども手がけていたはずだ。そう考えると,VFX産業の体力もかなりついて来た。
 予想通り,新たな種類のメカが多数登場する(写真3) 。そりゃそうだ,提携したビデオゲームやキャラクター玩具を売るには,個性的なキャラを多数作るに限る(写真4)。工夫の跡は見られるが,メカの材質感が表に出過ぎているためか,敵方の凶悪なロボットがまるで怖くない。全編メカ同士勝手に戦っているだけで,地球の危機といってもリアリティはないし,恐怖心も緊迫感も湧いて来ないのである。ただただ騒々しく,今回も尺が長過ぎる。何やら,大音量で過激なロック・コンサートのようだ。一緒に乗れる観客には爽快で陶酔できる世界だろうが,好みが合わない観客には苦痛で早く終わって欲しい2時間半だ。  
 
   
 
写真3 蜘蛛型の小型金属生命体「ザ・ドクター」
 
   
 
写真4 老将の「ジェットファイア」は長い髭が特徴
 
   
   それでも,CG/VFX的には秀逸と感じたシーンが3つあった。まず「キューブ」の小片がキッチン内のあらゆる金属物をトランスフォーマー化させてしまうシーン。これは楽しく,あっと驚くシーンだ。映画ならでは,CGならではの表現力だ。次に,猛獣の形をしたロボット(写真5)が発した多数の小さな金属球が建物に侵入し,それが増殖し変身する下りも見応えがあった。こちらもCGならではのパワーを活かした演出だ。最後に,北大西洋の米国艦隊が攻撃され,空母ルーズベルトが爆撃されるシーンも好い出来だ。物語に大きな影響を与えるシーンではないが,経験豊かなVFX技術者の腕の良さを感じた。それに続く海中の攻防も素晴らしい。      
   
 
 
 
写真5 ジャガーの形をした「ラヴィッジ」から多数の金属球インセクティコンが放たれる
(C) 2008 DreamWorks LLC and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
   
   前作の倍の製作費をかけただけあって,海外ロケもふんだんに行っている。ロンドン,上海,エジプト,ヨルダンへと物語が展開する。特筆すべきはエジプトのシーンで,とてもセットとマット画では表現できない壮大で質感の高いシーンが続く。贅沢な映画だ。
 という風に,なるべく褒めるべき点を探して書いた次第だが,最後に観客の生の声を紹介しておこう。
 
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 ◆若い男性2人(10代?)の会話 
 
 男1 「お前がすごいと言うから観に来たけれど,ロボットもクルマもカッコええな。あれがCGか。最近の映画はすごいな。ゲームよりもずっと迫力があるわ」
 男2 「そりゃ,画面がデカくて,金もかけてるんやから,当たり前やろ。俺はちょっと期待外れやな。1作目はスゴイと思ったけど,あんまり進歩がない。何遍も同じパターンを観たら飽きるわ。もうええわ」
 
   
 ◆20代のカップルの会話 
 
こんな映画やったん? 言うてたのと,全然ちがうやん。
悪りぃ悪りぃ。これ『トランスフォーマー』っていう映画やったんか。『トランスポーター』と間違えたわ。そやけど,これも結構オモロかったやろ? あのリーダーのロボットがカッコええな。
私はロボットなんか興味ないわ。こんなん,高校生の男しか見ないんと違うか。長過ぎるし,うるさ過ぎるし,もう疲れたわ。
 
   
   
   
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