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O plus E誌 2009年9月号掲載
 
 
 
BALLAD 名もなき恋のうた』
(東宝配給)
 
      (C)2009「BALLAD 名もなき恋のうた」製作委員会
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2009
 
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [9月5日よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国東宝系にて公開予定]   2009年8月10日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  山崎監督の初時代劇は,楽しいが,あまり泣けない  
   昨年の夏のことである。筆者が主宰した映画制作支援技術に関するシンポジウムで特別講演をお願いした山崎貴監督と,開会前に昼食をとりながら歓談した。その席で「次は時代劇なんです。まだ中身は言えないんですけど,期待していて下さい」と語ってくれた。そーか,彼までがついに時代劇か。今が旬の売れっ子監督に色々な経験をさせようという製作会社の思惑なら,日本映画界にとってはいいことだ。SF系の『ジュブナイル』(00年7月号)でデビューし,『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年11月号)でブレイクした現在も,必ず「監督・脚本・VFX」とクレジットを入れる山崎監督のことである。必ずや時代劇に新機軸を打ち出し,VFXの新しい側面を見せてくれるに違いないと期待した。
 オリジナル脚本かと思ったら,原作があった。それも時代小説ではなく,何と人気アニメの「クレヨンしんちゃん」で,戦国時代にタイムスリップするという。2002年公開の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』の実写リメイクというから,そーか,この企画がまだ秘密だったんだ。タイムスリップなら山崎監督の十八番である。『BALLAD 名もなき恋のうた』というロマンチックな題がいいではないか。大人も泣ける「クレヨンしんちゃん」がもとなら,さらに涙腺を刺激する悲恋ものに仕立ててくれる違いないと予想した。
 天正2年,戦国時代…。春日という小国に無敵を誇る1人の侍がいた。彼の名は井尻又兵衛。“鬼の井尻”と恐れられるその男は,命を賭けて守ってきた幼なじみの姫君・廉姫と互いに秘かな想いを抱き合っていた。ある日,一瞬の隙から命を奪われそうになった時,未来からタイムスリップしてきたという少年・川上真一が登場し,命を救う……という設定である。
 主演の井尻又兵衛にはSMAPの草g剛,廉姫には『恋空』(07)の新垣結衣というカップルだ。彼女の父である春日城主と乳母にベテランの中村敦夫と香川京子,敵軍の大名・大倉井高虎に大沢たかおというキャスティングである。草g剛はSMAPの中では演技派で,武者姿も決まっている。ところが,どうしても例のスッポンポン事件を思い出し,どんな恰好で逮捕されたのかなどと想像してしまう(笑)。まぁ,話題作りにはなったし,あんなに大騒ぎしながらも無事公開できたのだから,関係者もほっとしたことだろう。
 戦国時代へのタイムスリップで戦いに巻き込まれるというと,まず『戦国自衛隊』(79)やそのリメイク作『戦国自衛隊1549』(05年6月号)を思い出す。洋画なら中世にタイムスリップする『タイムライン』(04年1月号)だ。そうした作品群とは似ても似つかず,コメディタッチの楽しい映画だった。しんちゃんだけでなく,両親まで追いかけて戦国時代に登場する。この親子3人の雰囲気は,『ALWAYS 三丁目の夕日』の鈴木オート一家そのものだ。携帯電話が大活躍するかと思えば,ランドクルーザーが戦場を走り回る。「鬼の又兵衛」がカレーライスを食べるシーンは抱腹絶倒だ。
 
   さて,そうした変則時代劇ではあったが,クライマックスの派手な戦闘シーンを経て,しっかり泣かせてくれるエンディングかと思えば,これが大誤算だった。全く泣けないではないか。戦闘アクション場面は控えめだし,大沢たかおではまるで悪人には見えないし,2人の悲恋も薄っぺらだ。子供目線の映画になり過ぎていて,大人は少し白けてしまう。
 では,CG/VFXでの新機軸はと言えば,ある意味で予想通りであり,別の意味で期待外れであった。山崎監督自ら率いる白組のVFXチームは,予想通り見事なインビジブル処理を見せてくれる。素人目には,全くCGは登場しないかのように見えるだろう。別撮りした素材を巧みに合成したり,戦闘場面でデジタル兵士も分からないようにもぐり込ませている。撮影時のハンデをポスプロでVFXチームが背負い込んだかのようだ。
 
   白組の実力をもってすれば,もっと大軍団に激しいバトルをさせたり,タイムスリップを派手なCG演出で見せても良かったのではないか。想像するに,製作費はかなり低予算だったのだろう。例えば,写真3右図のようなシーンは映画中には登場しない。静止画での試し合成はしておきながら,実際にその動画シーンをCGで実現するだけの製作費は与えられなかったのではないかと思う(これは次なる『火天の城』も全く同じだ)。
 そうしたハンデは考慮しつつも,この山崎作品は低めの評点としておこう。次回作への期待ゆえである。
 
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