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O plus E誌 2010年10月号掲載
 
 
バイオハザードIV アフターライフ』
(スクリーン・ジェムズ
/SPE配給)
       
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月10日より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー公開中]   2010年9月3日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
 
         
   
 
2D版
3D版
THE LAST MESSAGE 海猿』

(東宝配給)

      (C) 2010 フジテレビジョン ROBOT ポニーキャニオン
東宝 小学館 エー・チーム FNS27社

 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [9月18日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開中]   2D版 2010年8月25日 東宝試写室(大阪)
3D版 2010年9月25日 TOHOシネマズ 二条
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  後半の3Dを意識した絵作りは,演習としては及第点
 
 

 次も3D作品だが,今度は実写版3D映画を2本取り上げる。いずれも若い世代に人気のあるシリーズの4作目で,最新作は3D化して話題作りをする必要に迫られたように見える。ブームとはいえ,3D技術を習得しておきたい製作会社にとっては,確実に固定観客が見込め,製作費をかけられるシリーズで試すのが安全策なのだとも考えられる。約1週間の差で公開されるこの2本は,日本の映画市場を二分する日米対決でもあり,まさに「リアル3D」と「2D→3D変換」の方式の違いを見比べる格好の題材でもある。
 まず,カプコン製の人気ビデオゲームを元にした『バイオハザード』は,低予算作品から始めて一作毎にスケールアップしてきたシリーズだ。ハリウッド資本ではあるが,製作国はカナダとドイツであり,日本市場もかなり意識している。親会社がソニーであるから,Blu-rayディスクにとっても,家庭用3Dテレビにとっても,早く3Dコンテンツを揃えたいという意向が感じられる。撮影機材面でのバックアップもあっただろうから,当然,ここは「2D→3D変換」ではなく,2台の最新デジタルHDカメラを駆使してのフル3D撮影である。勿論,『アバター』のジェームズ・キャメロン監督の指導を得た等,本物の3Dであることを最大限のウリにしている。
 主演のアリス役は,当然ミラ・ジョヴォヴィッチ。8年前の第1作目は,美形で,まだ可憐さも残っていた彼女も,最強のヒロインを演じると共に,すっかり貫録もついてきた(写真1)。今や『エイリアン』シリーズでリプリーを演じたシガニー・ウィーバーに匹敵する大看板だ。恐らく本シリーズは5作目以降も続くだろうから,映画史上に残る大ヒロインだ(日本には,藤純子が演じた『緋牡丹博徒』シリーズがあったが……)。

   
 
写真1 いまやゾンビも逃げ出すこの貫録
 
   
 

 監督は,シリーズ1作目のポール・W・S・アンダーソンが再びメガホンをとる。2作目以降も製作に関わってきたから,本シリーズの育ての親とも言える。助演陣では,アリ・ラーターが3作目に引続きクレア役で登場する以外には,あまり馴染みのある顔を見かけなかった。クリス役のウェントワース・ミラーは,TVドラマ「プリズン・ブレイク」の出身というから,強力な助演俳優を使わずに製作費を抑えた感がある。
 前作の最後に少しだけ登場した東京から物語は始まる。いきなり渋谷のハチ公前の雨のシーンで,これは日本市場へのサービスなのだろう。その後も全編を通じて,雨や水飛沫のシーンが再三登場する(写真2)。なるほど,対象物を切り出し難く,「2D→3D変換」は苦手な素材で,手前に視差をつけて描き加えるしかない。銃や腕をはじめ,物が画面中央から斜め前に配されている構図も目立つ。これは「2D→3D変換」じゃないぞ,書き割りじゃないぞとの主張のようだ。少々幼稚な主張ではあるが,3D映像制作の演習問題の解答としては,ぎりぎり及第点は与えられる。合格ラインは超えているが,『アバター』のような超優等生ではなく,驚きは少ない。

   
 
 
 
写真2 2D→3D変換じゃ無理でしょと言わんがばかり
 
   
 

 今回は,ウィルスの蔓延で世界中にアンデッド(ゾンビ)達が存在する中で,アリスが生存者を探し,刑務所内から救出するという物語だ。例によって,ゲーム世代向けの映像であるから,ストーリーはどうでも良く,派手なアクションによる映画ならではのスケールと,ゲームで馴染みのキャラがどれだけ出て来るかが鍵だ。その意味でのフル3D撮影は,ゲームでの3Dのあり方を探る上での実験も兼ねているのだと思われる。
 書き割り風ではなかったが,前半は画面が暗くて目が疲れた。アラスカの雪山のシーン等で明るくなり,ホッとする。終盤は白い壁をバックにした活劇シーンが大半で,画面がずっと明るい(写真3)。3D作品ゆえの知恵だろう。手前に向かって物を放り投げるシーンが何度か見られた(写真4) 。3Dを強調すると同時に,最新の高速度撮影カメラの効果を試す実験対象にもなっている。映像制作業界の3D技術関係者にとっては必見だ。

   
 
写真3 この明るさだと,光量が半分に落ちても見やすい
 
   
 
写真4 3Dを意識して,前方に物を放り投げるシーンも目立つ
 
   
  スケールアップの努力は買うが,採点不能で追試待ち
 
 

 7月に公開された『踊る大捜査線』と並ぶ邦画のドル箱シリーズだが,「フジテレビ+東宝」が同じ年の2ヶ月半差で両方投入してくるとは思わなかった。当初は3Dの予定はなかったというから,当然「2D→3D変換」の産物である。大作でその経験すらない日本映画界にとっては,本作品での3D上映の成否が,今後の3D映画製作の行方を占う試金石となるだろうと噂されている。この3D変換は,CG/VFX担当のオムニバス・ジャパンではなく,Q-TECが担当している。ポスプロ業界の雄であるが,最近CG,VFXでも名前を何度か目にする。本作の後に,『劇場版 3D あたしンち』の3D化担当も公表されているから,時流に乗って,3D変換を事業の柱にしようという意気込みのようだ。どんな出来映えか楽しみにしていたが,ようやく8月中旬に始まったマスコミ用試写会では,2D版しか上映されなかった。それだけ,難作業なのだろうか。止むなく,まず2D版を観て,後日3D版を再確認することにした。
 シリーズ4作目といっても,2作目はTV番組全11回であったから,劇場用映画としては3作目である。前作『LIMIT OF LOVE 海猿』(06)はタイミングが悪く,当欄で取り上げ損ねたが,同年の興行収入No.1作品だ。終盤の沈没シーンは,邦画のVFXとしては平均以上の出来映えであった。それから4年経っているから,当然その間の技術力アップも期待したいところだ。
 前作以降4年が経過し,海上保安庁・機動救難隊隊員の主人公・仙崎大輔(伊藤英明)と恋人の環菜(加藤あい)は既に結婚し,一男を設けている。本作で遭遇する海難事故は,天然ガスプラント施設「レガリア」に掘削船が衝突して火災が発生し,そこに超大型台風が到来するという設定である。写真5はイメージ図で,早い時期に公表されていたものだ。先日の海上保安庁のヘリ事故の後始末を見ると,このヘリの姿も白々しい。この国家プロジェクトの総工費が約1500億円という金銭感覚にも驚く。1桁か2桁違うんじゃないか?

 

 閑話休題。このスケールのアクシデントを描くのは,日本映画としてはかなり気合いを入れた大作になる。実際,国内としては最大級のスタジオに大掛かりなセットを組んでの撮影となった。この中での風水まみれの特殊撮影は,軟弱な俳優には過酷なものだっただろう。勿論,同テーマのハリウッド製パニック映画に比べれば,緊迫感もリアリティも足りなく,児戯に等しいが,経験しないことには技術も演技も上達しない。このスケールの企画を立てたことを評価しておこう。CG/VFXとしてはまずまずの出来だが,カメラワークはパンが多く,回り込みは少ない。やはり「2D→3D変換」が大きな制約を与えているのだろうか。  本稿執筆は公開5日前だが,とうとう3D試写を観る機会は与えられなかった。評価のしようがないので,公開後に映画館で観て,後日追加報告しよう。

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  (以下は,2010年11月号に掲載)  
  目は疲れないが,3Dメガネも要らない  
 

 先月号でのお約束通り,試写が観られなかった3D版の追試の結果を記しておこう。
 TOHOシネマズで観たから,3Dメガネは液晶シャッターのXpanD方式である。驚いたことに,本作の公開日から,3D鑑賞料金が300円から400円に値上げされていた。同方式を採用する松竹系のMOVIXもReal D方式のワーナー・マイカル・シネマズも300円に据置だから,TOHOシネマズだけが殿様商売だ。前週公開の『バイオハザード IV アフターライフ 3D』まで便乗値上げされていたから,2週目以降に来た観客は丸損だ。
 予想通り,画面は暗くて観づらかった。XpanD方式のせいだけではない。3D上映案内のポップコーンが浮かぶ映像や「FUJIFILM 3Dプリント」のCM映像は明るかったから,本編は3D上映を意識した光量調整をしていないと言わざるを得ない。手抜きだ。大抵の3D映画は,冒頭部に3Dの効果を感じさせるシーンが頻出するが,本作ではそれはなかった。その後,立体感のあるシーンも登場するが,大きな破綻はない。目も疲れない。一体これが別料金を取る3D作品なのかと思う。
 途中から3Dメガネを外して観ることにした。それでも,二重写しに見えて困るシーンはほとんどない。大半は人物が焦点面なので,後ろは少しボケた感じになっているだけだ。3Dメガネをかけると奥行きを感じる場面は時々あるが,その程度の価値しかない。「2D→3D変換」の担当会社としては,精一杯,無理のないように人物の切抜きと背景の再配置を行ったのだろうが,元々が3D向きの映像ではなかったと言える。
 さすがにCG製のレガリアやヘリなどは3D効果が顕著で,海保の管制室内も頑張っていた。一方,巡視船の航行シーンなどは何の効果もなしである。これなら,明るい2D版を観た方がいい。果たしてこれが,日本映画界の運命を左右する3D作品なのか? そうかも知れない。観客の3D率が70%以上で,これで400円プラスなら,製作会社も興行主も笑いが止まらないだろう。嘆かわしいが,今後も安易な「2D→3D変換」が幅を利かすことが予想される。本欄としては,この3D映画に400円余分に払う価値はないと評価しておく。         

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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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