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O plus E誌 2012年11月号掲載
 
 
 
 
『終の信託』
(東宝配給)
 
 
      (C) 2012フジテレビジョン 東宝 アルタミラピクチャーズ

  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [10月27日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国東宝系にて公開予定]   2012年9月26日 東宝試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  原作に忠実ながらも,周防作品らしい見事な映画化  
  終末治療と安楽死問題に医師と患者のラブストーリーを絡めた作品だが,まずこの表題だけで,心が惹かれるではないか。加えて,監督は『Shall we ダンス?』(96)の周防正行監督で,草刈民代と役所広司が同作品以来,16年ぶりに共演するという。日本アカデミー賞で,史上最多の13冠を得たこの黄金トリオの復活と聞いただけで,試写が待ち遠しかった。
 デビュー当時は毎年のように作品を撮っていたのに,同作品以降の周防監督は極端に寡作で,その後,劇映画としては,痴漢冤罪をテーマとした『それでもボクはやってない』(07)しか撮っていない。昨年,細君の草刈民代主演でバレエ作品『ダンシング・チャップリン』(11)を発表しているが,立て続けに本作品ということは,創作意欲が急に復活したのであろうか。『それでも……』では,刑事裁判における被疑者取り調べの人権軽視を問題視し,警察・検察の国家権力への反発を示したが,その精神は本作でも生きている。
 原作は,現役弁護士・朔立木の同名小説だが,主人公の女医・折井綾乃(草刈民代)が殺人罪に問われ,検察官の厳しい取り調べを受けるシーンが克明に描かれている。綾乃に最期を託す重度の喘息患者・江木秦三役は勿論役所広司だが,綾乃と不倫関係にあった同僚医師・高井に浅野忠信,検察官・塚原に大沢たかおというキャスティングである。大沢たかおでは柔和すぎて,冷徹な検察官に似合わないのではと懸念したが,これがなかなか様になっていた。舞台劇のような長いセリフも,容疑者を威嚇する態度にも,工夫の跡が見られた。
 題名から想像できる通り,重厚かつ繊細な作品で,いつもの周防流のユーモアは全く登場しない。とはいえ,余裕がない訳ではないし,息が詰まる展開でもない。2時間24分の長尺で,早々に検察庁に呼び出されるが,一向に取り調べが始まらず,延々と待たされる。この間,ヒロインの回想として,物語が展開するが,このじらし作戦が見事だ。主人公の心中に同期して,心を通わせた患者への思いが伝わってくる。じらしにじらした挙句に,その後,怒濤の45分間が展開する。
 延命治療や脳死判定の基準等の社会問題を問う映画ではない。どの角度から考えても,これは担当医の職分を逸脱した行為であり,これは有罪も止むを得ない。その行為に走らざるを得なかったヒロインの心情を克明に描いた展開は説得力があり,まごうことなく,これはラブストーリーだ。江木の最期の場面で,カメラは女医だけを捉え,同席している妻子の姿は全く写さない。物語の骨格は原作に忠実であるが,見事な映画化だ。
 本作はCG/VFX とは全く無縁である。短評欄で留めるに忍びず,もっと語りたくて,筆者も逸脱行為に走ってしまった次第である。
 
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