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O plus E誌 2013年1月号掲載
 
 
 
ホビット 思いがけない冒険
(ニューライン・シネマ&MGM/
ワーナー・ブラザース映画配給)
 
 
      (C) 2012 Warner Bros. Ent. TM Saul Zaentz Co.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [12月14日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2012年12月6日 なんばパークスシネマ[完成披露試写会(大阪)]  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新たな3部作の始動に相応しい堂々たる出来映え  
  映画史に残る大作『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(以下,LOTRと略す)の真っ当な後継シリーズであり,新たな3部作の第1作である。原作の児童文学は1937年出版の「ホビットの冒険」で,正確には続編でなく,LOTRの原作である「指輪物語」の前日譚に当たる。LOTRの大成功を受けて,すぐに本作の映画化の企画が持ち上がったが,版権問題,監督起用をめぐってのゴタゴタが伝わってきていた。ともあれ,監督はLOTRに引続きピーター・ジャクソンが担当することになり,世界中のファンも一安心した。
 当初2部構成の予定だったが,本作の撮影後に3部作とすることが発表された。製作としては,LOTRのニューライン・シネマと本作の配給権をもっていたMGMの両社がクレジットしているが,世界への配給はニューラインの親会社のワーナー・ブラザース(WB)が行うことになった。ドル箱であった『ハリー・ポッター』シリーズが終了したWBとしては,本シリーズ配給の実権を握り,1作でも多く作らせたいところだろう。
 LOTRの主人公はホビットのフロド・バギンズ(イライジャ・ウッドだったが,物語の発端は養父のビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)の111歳の誕生日を祝う会から始まっていた。本作は,そのビルボの若き日の冒険を描く物語である。LOTRでもお馴染みの魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)が,本作でも大きな役割を締めている。彼の推挙により,13人のドワーフ族が邪竜スマウグに奪われた祖国と財宝を取り戻す旅に,ビルボが帯同する。まさにLOTRの第1作『旅の仲間』に酷似した構成である。配役の面でも,絵作りにおいても,意図的に全シリーズでの既視感を強調する路線だと感じられた(写真1)
 
 
 
 
 
 
写真1 懐かしいホビット庄や裂け谷のこの光景は,既視感に溢れている
 
 
   監督は既に述べた通りP・ジャクソンだが,主要スタッフもVFX担当のWeta Digitalも,LOTRと同じである。本シリーズの成功には,これ以上の制作陣を望む方が無理というもので,円満解決したことは誠に喜ばしい。出演者は,若き日のビルボにマーティン・フリーマン。英国のTV界で活躍している俳優らしいが,余り馴染みがない。前シリーズのホビット,ピピン(ペレグリン・トゥック)に似た風貌だ。ドワーフ族の指導者トーリンには,リチャード・アーミティッジ。こちらも英国TV界のスターのようだ。LOTRのアラゴルンに当たるもう1人の主役であり,本作で一躍有名になることだろう。ドワーフはホビットより少し背が高い小人だが,いわゆる小人俳優は起用せず,全員普通の俳優を使い,トリック撮影でドワーフに見せている。
 出演者では,ガンダルフの他に,フロド,エルフのエルロンド(ヒューゴ・ウィービング)とガラトリエル(ケイト・ブランシェット),魔法使いのサルマン(クリストファー・リー)等が,LOTRと同じ俳優で登場する。ガンダルフとエルロンド以外は,原作に登場しないから,映画ファンのためのサービスである。以下,3D上映やVFXに関する感想とコメントである。
 ■ 前3部作を上回る仕掛けとして,予想通り3D作品として制作された。それも,従来の倍のフレームレートで撮影・上映する新方式「HFR 3D」での登場である。全体のクオリティが高いので,この効果がどれほど寄与しているか明らかでなかったが,ちらつきは少なく感じた。ドワーフとスマウグの確執を描いたオープニング・シーケンスは,3D の新方式を活かした演出であり,いきなりパワー全開で圧倒された。
 ■ 続いて,懐かしい音楽とともに長閑なホビット庄の光景が登場する。ビルボやフロドが住む家もLOTRそのままだ。もうこれだけで嬉しくなってしまう。やがて,ビルボの回顧譚として物語が始まる(写真2)。途中少し中だるみするが,これまた懐かしい「裂け谷」のシーンで目が覚める。お馴染みの登場人物もここで集結し,さあ後半が始まるぞというシグナルだ(写真3)。この谷のデザイン自体がパワーアップされているのが感じられる。実際,この谷のシーケンスの3D効果も大迫力であった(写真4)。この映画を2Dで観る観客は損をする。
 
 
 
写真2 本シリーズの主人公はフロドではなく,養父のビルボだ
 
 
 
写真3 この顔ぶれを揃えたのは,明らかにファンへのサービス
 
 
 
 
 
 
 
写真4 「裂け谷」もスケールアップし,3D効果があるようにデザインし直されている
 
 
   ■ クリーチャー類の質感も動きも格段に進歩していた(写真5)。トロル,ゴブリン,スマウグは勿論,兎の動きや大鷲の飛翔シーンも素晴らしい。LOTRは12年前の作品であるから,その間のCG/VFXの進歩を考えれば当然であるが,それを考慮しても尚,称賛に値する。そして,もう1人忘れてはならないのが,ゴラムだ(写真6)。この質感の向上も言うまでもない。演じているのは,勿論アンディ・サーキス。『キング・コング』(06年1月号) 『猿の惑星:創世記』(11年10月号)の経験からしても,彼を凌ぐMoCap俳優はいない。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 クリーチャー類の質感も格段にアップした。皮膚や筋肉の動きは生々しく,表情も豊かになった
 
 
 
 
 
写真6 最大のスター,ゴラムも一段とリアルに
(C) 2012 Warner Bros. Ent. TM Saul Zaentz Co.
 
 
   ■ そして,終盤は予想通り大バトルの連続であり,2つのスペクタクル・シーンが待っていた。これほどのシーケンスを,一体どうやってデザインしたのだろう? プレビスそのものも外注でなく,Weta Digital内で行われたようだ。満足度120%の新シリーズの開幕である。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分から,入替・削除・追加しています)  
   
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