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O plus E誌 2015年4月号掲載
 
 
映画 暗殺教室』
(東宝配給)
      (C) 2015 フジテレビジョン 集英社 ジェイ・ストーム
 東宝  ROBOT (C) 松井優征/集英社

 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [3月21日よりTOHOシネマズ日本橋他全国ロードショー公開中]   2015年2月24日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  映画化は今イチだが,応援したくなる学園もの  
  今月号のトップは,オスカー受賞作,VFX超大作を押しのけて,この邦画である。「週刊少年ジャンプ」で連載された同名コミックが原作で,TVアニメ化され(現在も放映中),ビデオゲームにもなり,そして劇場用実写映画という定番の路線(映画配給側から見れば,超安全企画)の産物である。どう考えても,コミック・ファンの若者以外の観客層を想定していない。作りも安易であり,高い評点も与えていないのに,なぜメイン欄のトップ記事なのかと言えば,筆者にとって,思わず応援したくなる「何か」があるからだ。シリーズ化するなら,是非パワーアップして,大人も楽しめる大型エンタメにして欲しいと願うだけの素材であると感じた。
 主人公は,月を半分破壊し,翌年春までに地球を破壊すると表明している正体不明の生物である。顔は球形,手足はタコのような触手の生物が,何故か,名門進学校・椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ学級「3年E組」の担任教師を希望し,着任するところから物語は始まる(写真1)。この怪物を抹殺すれば,日本政府から100億円の報償金が出るという密約から,生徒達は日々,先生の暗殺を試みる(写真2)。マッハ20の超高速で移動でき,破壊してもすぐ触手が生え変わり,簡単に殺せないことから,彼は「殺(ころ)せんせー」と呼ばれるようになる……。
 
 
 
 
 
写真1 暗殺の標的・殺せんせーは実写とCGの合成
 
 
 
 
 
写真2 原作者・松井優征は,まずこのシーンが思い浮かび,連載を始めたという
 
 
  学園もので,怪獣や怪物が登場する物語としては,『怪談レストラン』(10年9月号)『めめめのくらげ』(13年5月号)や『寄生獣』(14年12月号)を思い出すが,原作コミックの人気は「寄生獣」よりも数段上らしい。通常,連載が完結してから映画化される場合が多いが,まだ連載中なのに映画化されるのは,それだけ期待が大きく,固定ファンの集客力が見込めるからだろう。
 監督は,『海猿』シリーズの羽住英一郎。大作や CG利用の経験も豊富な監督だけに,無難な人選と言える。「殺せんせー」は勿論CGで描かれるから,生徒側での主演は,潮田渚役の山田涼介と赤羽業カルマ役の菅田将暉が二枚看板である。助演陣は,山本舞香,優希美青,上原実矩,加藤清史郎らの若手俳優や,防衛省から派遣の教員役で,椎名桔平,高嶋政伸,知英らが登場する。
 筆者は,コミック単行本の第1巻の半分強を読んだところで,試写会に臨み,その後,全12巻を一気に読んでしまった(その後,第13巻が出た)。なるほど,面白い。生徒達と殺せんせーのバトルにワクワクし,ジョークに大笑いし,先生と生徒の心の触れ合いに,すっかりハマってしまった。ズバリ評価すると,出来映えは,コミック≧TVアニメ>>映画の順と言わざるを得ない。原作のもつ躍動感を実写映画で生かし切っていないし,劇場用映画ならではのスケールも十分ではない。以下,賛否両論,両方を混ぜた形で評しておこう。
 ■ 殺せんせーの触手は,勿論,CGで描かれ,それなりの質感は出している(写真3)。フルCGにしては,衣服の質感も悪くないなと思ったら,所々,丸く大きな頭部を着けた人間が演じ,顔と手足だけCGで描き加えているようだ(写真4)。高く飛翔したり,宇宙まで飛び出すシーン等(写真5)はVFXの活躍の場となっているが,全体として僅かだ。CGクリエーター達は注文通りこなしていると思うが,「日本映画界最高峰のCG技術を駆使し」は,明らかに誇大広告だ。入場料をとる劇場版映画なら,マーベル・コミックを見習い,映画ならではの豪華でスピーディなアクション満載であって欲しい。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 クネクネした触手はCGならではの質感。陰影の付け方も上々。
 
 
 
 
 
写真4 写真1の実際の撮影シーン。頭部と触手を後で CGを描き加えている。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 こうしたCGならではのシーンもあるが,全体としては控え気味。もっと派手でも良かった。
(C) 2015 フジテレビジョン 集英社 ジェイ・ストーム 東宝 ROBOT (C) 松井優征/集英社
 
 
  ■ CG/VFX以上に期待外れだったのは,学園ものらしい爽快感,原作の随所に見られるユーモア,ギャグのセンスの欠如だ。最大のミス・キャストは,これが映画初主演となる山田涼介だと思う。小柄で,少女と間違えるような美少年という設定ゆえの起用だろうが,余りにも演技力がなく,存在感が希薄だ。菅田将暉のカルマ役は悪くなかったが,身長は無視して,女装が似合う彼に渚役をさせた方が良かったかも知れない。原作では,1話毎に各生徒にスポットライトを当てている。映画の初回作でこれは無理でも,シリーズ化するなら,もっと個性ある描き方を期待したい。本作に登場しなかった理事長父子も,是非出して欲しい強烈なキャラだ。
 ■ 少しドキっとする題名とは裏腹に,原作には現代風の教育論が盛り込まれている。地球の破壊宣言者が,なかなか良い教育者であるというアンバランスが楽しく,拍手したくなる。少し白々しい教育観も見られるが,これが最近の生徒・学生たちの心の琴線に触れるのだろう。この基本骨格がしっかりしているなら,後はスケールの大きなアクションと組み合わせるだけで,かなりユニークで,強力なシリーズとなるはずだ。2作目以降,それを期待してのトップ記事扱いである。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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