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O plus E誌 2017年9月号掲載
 
 
ダンケルク』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2017 Warner Bros.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月9日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2017年7月31日 109シネマズ大阪エキスポランド[完成披露試写会(大阪)]
       
   
 
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関ヶ原』

(東宝&アスミック・エース)

      (C) 2017「関ヶ原」製作委員会
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [8月26日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年7月7日 東宝試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  歴史の転換点となった戦いを描いた大作2本  
  次なる意欲作は,史実に基づく戦闘を描いた2本である。時代も場所も全く異なるが,共に歴史的転換点となった戦いをスペクタクル大作として描いている。
 まずは,第2次世界大戦における「ダンケルクの戦い」で,ドイツ帝国軍の破竹の勢いの前に,英仏軍が撤退を余儀なくされる退却戦だ。もう一方は,日本人なら誰もが知っている「天下分け目の合戦」で,意外にもこの戦いが本格的に映画化されるのは初めてとのことだ。
 
 
  名監督が撮った,戦争映画史に残る大傑作  
  ダンケルクとは,ベルギー国境に近いフランス北西海岸の地名で,1940年5月から6月にかけての同地での連合軍の撤退作戦は「ダンケルク大撤退」「ダイナモ計画」とも呼ばれている。軍事的には,4年後に連合国軍が侵攻する「ノルマンディー上陸作戦」ほど決定的な出来事ではないが,この世界大戦前半の大きな救出作戦であり,英仏軍合わせて30数万人の兵力を失わずに済んだことにより,士気も高まり,後の反転攻勢に繋がる軍事行動であったとされている。
 過去に3度映画化されている。英国映画『激戦ダンケルク』(58),フランス映画『ダンケルク』(64)はそれぞれ英国人,フランス人が主人公で,題名通りこの撤退作戦を描いていた。当欄で紹介した『つぐない』(08年4月号)では,中盤に少しだけ登場する。フランスに出征した主人公が過酷な戦闘を体験し,撤退命令で辿り着いたのが,このダンケルクの浜辺であった。
 さて,本作の出来映えであるが,前評判通りの大傑作であった。監督は『ダークナイト』(08年8月号)『インセプション』(10年8月号)のクリストファー・ノーラン。一流監督は何を撮らせても一流だということの証明になっている。間違いなく,戦争映画史に残る作品だ。『プライベート・ライアン』(98)『硫黄島からの手紙』(06年12月号)『ハート・ロッカー』(10年3月号)等と比べる評を見かけたが,筆者は『ブラックホーク・ダウン』(02年3月号)『ゼロ・ダーク・サーティ』(13年3月号),そして今年公開の『ハクソー・リッジ』(17年7月号)に比肩し得るか,それ以上の作品と評価しておきたい。
 陸海空それぞれでの苛烈な戦いが描かれていて,セリフも少ない。よって,物語全体を牽引する主役はいないのだが,繊細な若き英国兵トミー役のフィオン・ホワイトヘッド,民間船の船長役のマーク・ライランス,英国軍パイロット役のトム・ハーディーが目立った存在である。内容から当然だが,女性は殆ど登場しない。
 開始早々から全編緊迫感の連続で,空爆から逃げ惑う海岸,海水が流れ込む船内,敵機と交戦中のコックピット内……と,自ら戦っている気分にさせてくれる。以下,当欄の視点での感想とコメントである。
 ■ 本作の大半はIMAX70mmフィルムか65mmフィルムで撮影したという。何より嬉しいのは,大阪での完成披露試写は,109シアター大阪エキスポランドのIMAXシアターで行われたことだ。それも極く一部のシーンを除いて,4:3の広いIMAXスクリーン全面での上映である。ただし,一般映画館での上映を考慮して,上下カットしても差し支えない構図が目立ったのが,少し残念だった。それでも,空中戦で眼下に海が見えるシーンなどは,IMAXの魅力が堪能できる(写真1)。ハンス・ジマーが最も得意とする緊迫感を煽る音楽も,IMAXシアターの低音と見事にマッチしていた。
 
 
 
 
 
写真1 この画像は上下カット版だが,IMAXなら壮観だ
 
 
  ■ CG嫌いで有名なノーラン監督だけあって,この手の大作にしてはCG/VFXの出番はかなり少ない。英国空軍のスピットファイアもドイツ軍のメッサーシュミットも,戦闘機の描写にCGは一切使っていないという(写真2)。本当か? 多分本当だろう。唯一,煙を噴いて墜落するドイツ軍機だけはCGだろうと思ったのだが,墜落専用のハリボテ機体を本当に落下させたようだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 飛行する戦闘機はすべて本物だという
 
 
  ■ 桟橋上や浜辺での多数の兵士は,現地のエキストラらしいが,それでも足りない人数もCGではなく,人形や紙粘土で作った張り子を多数配置したという(写真3)。いずれもCGで簡単に作れるし,今はコストも安い。演出の自由度も増す。それを敢えてCGなしに拘るのは,単に監督の矜持に過ぎず,合理的な判断ではない。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 多数の兵士もCGでなく,紙粘土製だとか
(C) 2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
 
 
  ■ 兵士や戦闘機にCGは使わなくても,海岸やダンケルクの街,ロンドン市街を77年前の戦時中状態に戻す必要がある。ここに不要物を消し去るVFX処理が必要であったはずだ。本作の主担当は,ロンドンのDouble Negative。図らずも,『つぐない』の印象的な浜辺のシーンも,同社が担当して描いていた。
 
 
  鮮烈な映像で語る天下分け目の戦いの新解釈  
   誰もが知っている徳川家康率いる東軍8万人と石田三成が指揮する西軍10万人の戦いだが,この戦いの勝者によって,その後の日本の歴史は変わっていたと言える。本作の原作は司馬遼太郎の「関ヶ原」(戦国4部作の3作目)とされている。石田家の重臣・島左近の存在を大きく描いた全3巻の長編小説である。監督・脚本は,『クライマーズ・ハイ』(07)『日本のいちばん長い日』(15)の原田眞人。ハリウッド大作『ラスト サムライ』(04年1月号)には俳優として出演している。本作は随所で同作の影響が感じられ,これに対抗し得る邦画を作りたいという情熱が感じられる。
 NHK大河ドラマで戦国時代を扱う作品では,必ずと言っていいほど登場する合戦だが,激しい戦いは描かずに済ませている年も少なくない。同じ司馬作品を原作として,真正面からこの戦いを描いたのは,1981年の正月に3夜連続で放映されたTBS創立30周年記念番組で,現在でも評価が高い。石田三成(加藤剛),徳川家康(森繁久彌),島左近(三船敏郎)を初め,当時の豪華俳優陣が適役で見事にキャスティングされていた。
 原田監督が本作の映画化を熱望したのは25年前で,主役を替えて,何度も構想を練り直したという。最終的に石田三成(岡田准一),徳川家康(役所広司)という組み合わせで,原作にほぼ忠実な物語に落ち着いたそうだ。両軍で名のある武将が多数登場するので,必然的に登場人物は多いが,さほど豪華な俳優陣ではない。島左近(平岳大),大谷刑部(大場泰正),豊臣秀吉(滝藤賢一),北政所(キムラ緑子)等,舞台俳優中心の,やや地味なキャスティングだ。その一方で,小早川秀秋(東出昌大)の位置づけが原田監督の新解釈であり(写真4),三成の愛妾・初芽(有村架純)の出番が多いのが印象的であった(写真5)
 
 
 
写真4 小早川秀秋(左)は原田監督の新解釈 写真5 有村架純(右)の起用は,若い観客目当てか?
 
 
   本作に関する筆者の印象は,以下の3点である。
 @まず絶対的に,映像が頗る美しい。壮大あるいは華麗なシーンが続く。山も川も,城も屋敷も,座敷も調度類も,何から何までビジュアルの質感が高い(写真6)。シネスコ画面も縦横に使っている。現代の日本で,一体どこで撮影したのかと感心する場面の連続だ。
 
 
 
 
 
写真6 室内の美術装飾もパワー全開
 
 
   Aその反面,残念だったのはドラマ部分の語りの粗っぽさだ。テンポが早過ぎ,セリフも早口で,落ち着きがない。まるでBluRay再生機で早送りしているかのようだ。日本人は,NHK大河ドラマ風の間の取り方や,芝居がかった演出に慣れ親しんでいる。その点では,圧倒的にTBS版の方が優れた本格的時代劇だと感じる。
 B終盤の「関ヶ原の合戦」開始後の戦闘描写は,さすがだった。この迫力,このリアルさ,正にハリウッド級だ(写真7)。馬400頭,エキストラ3,000人を投じたという。戦闘の演出では,TBS版を圧倒している。『ラスト サムライ』を意識していることは明らかで,原田監督が私淑する黒澤明作品『影武者』(80)『乱』(85)の影響もかなり受けていると感じられた。
 
 
 
 
 
写真7 甲冑姿も合戦シーンも,本格的かつ美的で堪能できる
(C) 2017「関ヶ原」製作委員会
 
 
   さて,当欄の関心の対象であるCG/VFXであるが,全編でたっぷりと使われていた。主担当はNICE+DAY社で,20以上のCGスタジオが参加している。各地の城は実写を活用しながら,大半はCGで描いているようだ。いずれも良い出来だ。大軍の描写は当然CGだが,ベストショットは小早川軍が布陣した松尾山から関ヶ原を俯瞰する場面だと思う。残念なのは,それらのスチル画像が全く公開されないことだ。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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