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O plus E誌 2018年1月号掲載
 
 
DESTINY
鎌倉ものがたり』
(東宝配給)
      (C) 2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [12月9日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2017年11月20日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  期待の新シリーズの第1作は,終盤で大ブレイク  
  日本映画界で最もVFX利用に長けた山崎貴監督の最新作である。デビュー作『ジュブナイル』(00年7月号)以来,当欄では特別な思いを込めて応援し続けて来たことはご存知の通りである。12月9日公開であるから,12月号のトップを飾るべきなのに,1月号でSWシリーズの陰に隠れてひっそり紹介するのには理由がある。本作に限って,CG/VFX処理が遅れ,マスコミ試写が先月号締切に間に合わなかったからである。その分,これまでの作品よりもVFXが充実しているのだと解釈した。
 題名からすぐに『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの後継作品だと読み取れる。昭和33年,34年,そして同39年の東京五輪時の東京の下町を舞台に3作が作られた。筆者は,高度成長期の昭和を追い,大阪万博,オイルショックの頃までを,同じ俳優陣で登場人物たちの成長が描かれることを期待していたのだが,そうはならなかった。代わっての原作コミックは,同じく西岸良平作品で,1984年2月から「漫画アクション」に,2000年12月からは同じ出版社の「まんがタウン」に移籍して連載されている。「三丁目の夕日(夕焼けの詩)」よりも約10年歴史は浅いが,30年以上も同じスタイルで毎回読み切りのエピソードを綴る長寿作品である。
 時代は特定されていないが,原作開始時の1980年代で時が止まっているように思える。映画でもこれが踏襲されていて,道路を走るクルマは,ヴィンテージ・カーのベンツの他,トヨペット・コロナ,マークII,シビック,スバル1000等々で,1970年代後半から80年代の昭和末期を描いているようだ。舞台となるのは神奈川県鎌倉市とそこから藤沢市にかけての湘南海岸,即ち,絵になる江ノ電沿線である。ただし,現実の鎌倉ではなく,人間の他に,妖怪や魔物,既に死者となった人物の幽霊が混在して住んでいる。即ち,古都・鎌倉は昔から魔界,異世界に通じる入り口という設定である。
 主人公は,ミステリー作家の一色正和と歳の離れた妻・亜紀子で,コミックでも映画でもこの2人の出番が大半を占める。『ALWAYS…』が小説家・茶川一家と鈴木オート一家の2家族が中心に展開したのとは対照的だ。県警・鎌倉警察署内には「心霊捜査課」が設けられていて,人間と魔物と混血児である刑事たちが所属している。一色夫妻は,鋭い勘と洞察力で捜査協力し,難事件を解決する。なるほど,魔界とミステリーの二大要素は,映画化にはうってつけのネタである。
 主演の一色正和役には,いま引っ張りだこの堺雅人。ほんわかムードの西岸作品には向いているが,他作品の主人公のイメージも強い。原作の雰囲気からすると,もっと長身で面長の男優を起用しても良かったかと思う。童顔で無邪気な亜紀子夫人役には,高畑充希が起用された(写真1)。コメディタッチの前半には彼女の屈託のない演技がドンピシャでハマっている。JRAのCMで見られる,あの能天気で無邪気な女性のノリそのままである。

 
 
 
 
 
写真1 無邪気な妻役がぴったりの高畑充希(左)
 
 
   助演陣の堤真一,薬師丸ひろ子,三浦友和は『ALWAYS…』でお馴染みの顔ぶれだ。少し意外な起用では,安藤サクラの死神,田中泯の貧乏神がいい味を出していた(写真2)。家政婦の老婆(何と142歳!)役に中村玉緒もぴったりだった。既に幽霊の瀬戸夫人の吉行和子とその旦那に橋爪功という老夫婦は,山田監督の『東京家族』シリーズへのオマージュだろうか。
 
 
 
 
 
写真2 いつもは渋い役の田中民が,何と貧乏神(右)
 
 
  以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ 冒頭からの一色夫妻の新婚生活に,老婆キンや貧乏神が絡むコメディはいいテンポで,『ALWAYS…』シリーズとは少し違った路線だと感じられた。妖怪・魔物の登場で最初の見ものは,原作にもある「夜市」のシーンだ。東南アジア諸国の夜の町を思い出す。妖怪が集う様は,『スター・ウォーズ』(77)に衝撃を受けて映画人を目指したという山崎監督だけあって,モス・アイズリーの酒場のシーンを十分意識したシーンだと思われる。魔物たちのキャラ・デザインは山崎監督自身だが,水木しげるワールドとも一味違うなと感じた。
 ■ 中盤までに,CG/VFXシーンは結構登場する。幽体離脱,投げ縄,ピタゴラスイッチ風の連続技,稲荷刑事の鼻等の様々な怪奇現象は,明らかにVFXと分かるシーンだ。少し昔の多重露光合成を思い出させる場面も多く,これは意図的に摩訶不思議な感じを醸し出そうとしたのだろう。正直なところ,完成が遅れたにしては今イチと感じる出来映えだった。ところが,物語全体の7割程度が過ぎた頃,不慮の死を遂げた亜紀子夫人を取り戻すべく,一色は江ノ電に乗って「黄泉の国」へと向かう(写真3)。ここから物語が,CG/VFXパワー全開のファンタジー・アドベンチャーへと急旋回する。
 
 
 
 
 
写真3 黄泉の国に向かう場面から,物語は一変
 
 
  ■ この黄泉の国のデザインが素晴らしい。電車の両側に迫るのは険しい崖とそそり立つ岩山だ。当然大半はCGの産物だろう。よく観ると顔が描かれていて,笑っている(写真4)。『グリーン・デスティニー』(00)で描かれた中国奥地の山々を思い出す。一方,黄泉の国の中心部は『千と千尋の神隠し』(01)で千尋が迷い込んだ神々の世界,高い建物は「油屋」は彷彿とさせる。間を木製の通路が通る高床式住宅の密集地も良いデザインだ。いずれもアジアの香りがし,懐かしさを感じる。こちらは,ミニチュアセットとCGを併用しているようだ。
 
 
 
 
 
写真4 黄泉の国の印象的な断崖。岩に顔があり,笑っている。
 
 
  ■ 江ノ電の車両が頻繁に登場するが,本作のために何度か路線上を旧式車両で運行してもらったようだ。一方,黄泉の国での江ノ電タンコロ(連結なしの単独車両)は丸ごとCGだろう(写真5)。『ALWAYS…』シリーズで都電を何度も再現して見せたのだから,これくらいは当然だ。このいずれかだと思ったら,一部のシーンでは,タンコロそのものを実物大で製作し,車内の内装も施したという(写真6)
 
 
 
 
 
写真5 三途の川を渡る旧式の江ノ電。大滝のCG表現も見どころの1つ
 
 
 
 
 
写真6 駅舎セットと再現した実物大の江ノ電タンコロ
 
 
  ■ 魔物は俳優が演じ,顔だけをCGですげ替えている(写真7)。一見かぶり物風ではあるが,CGでしかできない動きが少なくない。わざと手作り感を出していると見て取れた。ボスキャラである天頭鬼はかなり大柄で,想定身長2m30cmである。彼だけ別撮りしておいて,他の標準身長の魔物たちと合成しているようだ(写真8)。他では,一色夫妻が逃げ出す際の木製のゴンドラシーンも好い出来だった。CG/VFXの主担当は,勿論山崎監督が所属する白組だが,相変わらず僅か30人足らずでこの膨大な作業量をこなしている。
 
 
 
 
 
写真7 堤真一はカエルの魔物として再登場
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真8 上:魔物役はマスクをつけて演技,中:サイズが異なる天頭鬼は別撮り,
下:最終の合成映像
(C) 2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
 
 
  ■ 以上,随所で高い評価を下しながらも,満点の評価を与えなかったのは,今後シリーズ化するものと考え,もっと充実した作品群になることを願ってのことである。原作に比べて,ミステリー性は少なかったので,次回作以降,謎解きの面白さも満喫させてくれることを期待しておきたい。
 
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  (本文は加筆し,画像はO plus E誌に追加しています)  
   
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