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2018年Webページ専用記事#3
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   (隔月刊の本誌でカバー仕切れない作品をWebページ専用記事として掲載する。この短評欄は随時少しずつ追加するので,時々点検されたい)

 『さすらいのレコード・コレクター 10セントの宝物』:音楽ものドキュメンタリーだが,対象は演奏家や歌手ではなく,レコード・コレクターである。たった52分の映画で単館系で順次公開となると,観客の目に触れる機会は多くないが,紹介しておきたい。被写体は81歳の米国人男性で,78回転のSPレコード,それも1920年代から30年代のフォーク,ゴスペル,ブルーグラスを約25,000枚も集めている。ヒップホップやロックは大嫌いだという。10セントで売られていたSP盤を求めて,全国の古い家を探し回る。いかにもマニアで,自宅地下室の壁一面のレコード蒐集は壮観だった。その部屋でお気に入りのレコードをかけながら,踊り,笑い,語る姿は幸福そのものだ。観ている側も嬉しくなる。映画は人物紹介とともに,吹き込まれた時代の映像を付すことで,これが米国史の貴重な資産だということを暗示している。筆者が彼の生き方を礼賛し,羨望の眼で見るのは,同好の士だからだろうか。ただし,筆者のiTunesに入っているのは,最近の新譜やレンタルも含めて,現在アルバム7,334枚だから,足下にも及ばない。
 『50回目のファーストキス』:山田孝之と長澤まさみが主演のラブストーリーで,あまり似合いのカップルと思えなかったのだが,題名が少し気になったので,マスコミ試写に足を運んだ。『闇金ウシジマくん』シリーズの強面の方が似合う山田孝之だが,前半のチャラ男ぶり,ギャグの演技も悪くない。彼が一目惚れする美術教師役の長澤まさみは,美女なら誰が演じてもいい役だが,まずまず似合っていた。彼女が交通事故の後遺症で,記憶が1日しか持たない記憶障害と判明し,物語は一変する。『メメント』(00)の10分,『博士の愛した数式』(06)の80分より短期記憶は長いが,展開は俄然面白くなる。こうした難病ものは,後半ベタなハートフルドラマとなりがちだが,ずっとギャグシーンを盛り込んだのがエライ。とりわけ,ヒロインの父親(佐藤二朗)とホモの弟(太賀)の掛け合いは最高だ。脚本が素晴らしく,どんな結末になるのかワクワクさせる。エンディングもハッピーな気分にさせてくれ,邦画にしては出色の脚本だと感心した。と短評はここまでで終わるはずだったが,後で2004年公開のアダム・サンドラー,ドリュー・バリモア共演作のリメイクと知ったので,さらに追記しておこう。なるほど,それじゃ表題に覚えがあったはずで,物語の骨格がしっかりしているのも当然だ。前作は未見だったので,早速ビデオで内容確認した。骨格どころか,主要シーンもそのセリフも,エンディングのアイデアも,ほぼそのままだ。主演男優の役柄が海洋生物研究者から天文学者に変わっているに過ぎない。リメイク作でも,ここまでのそっくりコピーは珍しい。ともにソニーピクチャーズ製で原脚本の権利をもっているからできる芸当だろう。公平に評価して,(じゃんけん後出しではあるが)本作の方が出来がいい。よって,前作未見の方は本作だけを観れば十分だし,前作を気に入っていた読者も,見比べる価値はあると思う。
 『最初で最後のキス』:50回の次はたった1回のキスだ。英題は『One Kiss』だが,イタリア映画なので原題は『Un Bacia』で,男2人,女1人の高校生の青春ドラマである。これが邦画で,女子コミックが原作だったなら,即パスしていたはずだ。イタリア映画と言うだけで食指が動いたのは,若い頃に散々見たコクのあるイタリア恋愛映画への郷愁と信頼感からだろうか。ただし,タッチは大分違っていた。洋の東西を問わず,いじめや差別が横行する高校で,主人公たちはその対象の3人である。青春のエネルギーが炸裂する恋と友情の物語だが,男女の3角関係ではない。むしろ,孤児で里子のロレンツォが,運動センス抜群の不器用なアントニオをゲイの対象に見ることから生じる複雑な関係が,繊細な心理描写で描き出されていた。監督は,脚本家出身のイヴァン・コトロネーオ。青春の煌めきと残酷さを描きたかったというが,思い掛けない結末とラストの回想シーンで,それは達成されている。原作にない少女ブルーの扱いが,特に秀逸だ。登場人物の心に寄り添う音楽の選曲が素晴らしい。これは,サントラ盤紹介コーナーで語ることにしよう。
 『空飛ぶタイヤ』:骨太で,真面目な社会派ドラマだ。原作は,多数の人気TVドラマを生んだ池井戸潤のベストセラー小説だが,意外にもこれが初の映画化作品である。死亡事故を引き起こしたトラックの脱輪が,整備不良と認定されたが,車輌自体の構造欠陥ではないかと疑う運送会社の社長が,大手自動車会社の不正を暴くために戦う。キャッチコピーは「事件か,事故か。」だが,結論は最初から明白で,ハッピーエンドに決まっている。問題は,その過程を納得が行く展開で描けるかだ。最初から直球勝負で,これで2時間持つのかと心配したが,次第に緩急を織り交ぜ,丁寧にコーナーを付き,最後はズバッっと速球勝負で決めてくれる感じだ。主演の3人(長瀬智也,ディーン・フジオカ,高橋一生)の立ち姿が表に出ているが,高橋一生の出番がやや少ない。笹野高史,佐々木蔵之介,柄本明,ムロツヨシらの助演陣の好演も光っていた。絶品なのは,欠陥の隠蔽を指揮する常務役の岸部一徳だ。いかにも大企業の重役にいそうなタイプで,こういう悪役を演じさせると上手い。組織人の悲哀,中小企業の苦労がよく描けているが,少し生真面目過ぎる。1つくらいラブロマンスを織り交ぜても良かったかと思う。
 『母という名の女』:いや驚いた。映画に登場する女性は個性的で奔放だとしても,こんな母親がいるとは呆れた。『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(18年3・4月号)の母親は正に「鬼母」だったが,こちらは「毒母」とでも言うべきか。母親アブリルを演じるのはスペイン人女優のエマ・スアレス。メキシコ映画で,彼女以外の出演者もミシェル・フランコ監督もメキシコ人である。アブリルは,離婚した夫とも別荘に住まわせている娘2人とも疎遠で,メキシコシティに一人暮らししていた。17歳の次女ヴァレリア(アナ・バレリア・ベセリル)が妊娠,出産したことから,駆けつけて甲斐甲斐しく孫娘の世話をする。やがて独占欲が芽生え,策をめぐらして,自分のものにしてしまう。さらに,娘の伴侶マテオ(エンリケ・アリソン)を誘惑して,同棲し始める。まさに若い男を食べてしまうという感じだ。引き裂かれた娘の逆襲を描く後半の展開は見ものだ。一体,結末はどう落ち着くのだろうと思わせぶりだが,期待通り,なかなか粋なエンディングだったとだけ言っておこう。
 『アメリカン・アサシン』:47歳で早世した米国の人気作家ヴィンス・フリンが遺したスパイ小説「ミッチ・ラップ」シリーズの映画化作品だ。原作小説はシリーズ12作目だが,これが初映画化なので,無差別テロで恋人を亡くし,復讐に燃える青年ミッチがCIAにスカウトされ,エージェント教育を受けるプロセスも含まれている。主役に抜擢されたのは『メイズ・ランナー』シリーズのディラン・オブライエン。少し線が細い気もしたが,激しいアクションも軽快に卒なくこなしていた。トム・クルーズほどのオーラはないが,故ポール・ウォーカー級の活躍はしそうだ。彼を鍛える鬼教官役はマイケル・キートンで,こちらはピッタリだった。スパイ・アクションとしてはごく平均レベルで,エンタメとしては十分楽しめるが,当欄としては見どころが2ヶ所あった。まず第一は,CIAの特訓でAR 用のゴーグルをかけ,敵を瞬時に識別して射殺するシーン。もう一方は(少しネタバレになるが)クライマックスの水中核爆発シーンだ。その爆風で米国海軍の第9艦隊が半壊するVFXシーンである。担当はDouble Negativeなので,品質は折り紙付きだ。欧米での興行成績は余り芳しくなかったようだが,是非このままシリーズ化して欲しい。
 『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』:『ウォレスとグルミット』や『ひつじのショーン』シリーズでお馴染みの英国アードマン・アニメーションズの,劇場用長編コマ撮りアニメの最新作である。初めて人間が主人公だという。あれっ!? 発明家のウォレスがいたはずだと思ったが,主役は犬のグルミットで,彼は脇役だった(本当にそうか?)。同社にしては珍しい設定で,石器時代の人間が青銅器文化をもつ文明国家の利権主義に蹂躙される様を描いている。何やらアフリカと西洋社会のような構図に思える。というと小難しく聞こえるが,W杯の年にぶつけて,民族間対立をサッカーの試合にして楽しませてくれる。音楽は軽快,人形がいつものルックスなので,ほのぼの感もいつも通りだ。基本は人形アニメだが,既にCG/VFXもかなり使っている。火山の爆発,溶岩石,競技場の大群衆はCG製だろう。物語は凡庸だが,ギャグの連発は楽しめ,強豪チームのレアルとの最終決戦は盛り上がった。
 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』:新聞やTVで大きな話題だったので,今でもこの世紀の「性別間の戦い」のことをよく覚えている。当時女子テニス界の女王だったビリー・ジーン・キング夫人に,男性優位主義者の元チャンピオン,ボビー・リッグスが挑戦状を叩きつけた試合だ。もう,45年にもなるのか。日本では「神田川」が流行っている頃だったと記憶している。キング夫人のルックスが南こうせつにそっくりで,姉ではないかと噂されたくらいだ(笑)。余談だが,この試合の開催日と「神田川」のレコード発売日が全く同じ1973年9月20日である。残念ながら,主演のエマ・ストーンじゃ可愛い過ぎて,彼女に全く似ていない。とはいえ,テニスの特訓を何ヶ月もしたらしく,すっかりスポーツ選手らしい体形になっていた。むしろ,相手役のスティーヴ・カレルの方がボビーの感じをよく出していた。何しろ,この時代のキング夫人は抜群に強かった。実は性転換した男性ではないか,染色体検査をするべきだという声すらあった。後年,カミングアウトして,レズビアンだった判った時も,全く意外ではなかった。映画は,まだそれを明らかにできずに悩む,当時の彼女の姿を中心に描いている。現代だから作れる映画だが,まるで同性愛者礼賛のようにも受け取れる。むしろ,男女同権運動の闘志であり,女性選手の地位向上に果たした業績の方を大きく描いて欲しかった。
 
 
     
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