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2018年Webページ専用記事#3
 
 
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
(ルーカスフィルム/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン配給)
      (C) 2018 Lucasfilm Ltd.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2018年6月29日よりTOHOシネマズ日比谷他,全国ロードショー公開予定]   2018年5月29日 TOHOシネマズ なんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  またかと思う反面,不評と聞くと応援したくなる  
  お待たせしました。完成披露試写は米国公開の数日後,本邦公開の1ヶ月前の5月29日に観たのだが,どう書こうかと思案している内に時間が経ってしまった。O plus E本誌の隔月刊の谷間になり,Web専用記事だと明確な締切がないので,余り書きたくないと筆が進まないのである。それでも,当欄としては避けて通れない作品であるので,熱心な固定読者のために,義務感だけから私見を述べることにしよう。
 6月29日公開と聞いての第一印象は「また,SWシリーズか。さほど観たくないな」であった。米国では2018年夏公開という情報はかなり前に得ていたのだが,「ディズニー配給作品は,マーベルとピクサーだけで手一杯だから,SWのスピンオフものなら,国内は恒例の年末公開まで待てばいいのに」というのが偽らざる心境であった。
 題名からすぐ分かるように,ハン・ソロが単独主人公の外伝である。ハリソン・フォード演じるハン・ソロは,エピソード7 (EP7)『フォースの覚醒』(15)で息子カイロ・レンの手により落命するが,本作は『EP4 新たなる希望』(77)から約10年前の設定となっている。即ち,アウトローとなるハン・ソロの若き日の物語である。その試写を観ての感想は,「何だ,普通のアクション映画じゃないか。大きな欠点はないが,ワクワク感もない。さほど期待してはいなかったのだが,SWシリーズとしてはファン・サービスが少ない」であった。
 同じく外伝でEP4前夜の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(17年1月号)の方がずっと面白かった。本作はどう評価し,紹介すべきかと迷っている内に,海外から様々な噂,悪評が伝わって来た。やはり筆者と同様,前作からたった5ヶ月という間隔の短さ,「SW疲れ」を指摘する声が多かったようだ。それでも,全米Box Office成績は2週連続1位で,4週強で2億ドル(約220億円)を突破している。邦画に比べれば驚くべき数字,立派なものだと思うが,これがEP7以降の新シリーズでは最低の興行成績だという。製作費は前作『EP8 最後のジェダイ』(18年1月号)を上回る2億5千万ドルだというから,並みの稼ぎ高では許されない訳だ。
 さらに驚くべきニュースも飛び込んできた。外伝としてはさらに,オビ=ワン・ケノービとボバ・フェットを主人公とした2本が予定されていたが,本作の不調により,この計画が中止となったそうだ。当面は正史EP9(2019年12月公開予定)に集中するのだという。おやおや,エライことだ。ここまで来ると,本作を少し応援したくなってきた。
 EP4より時代は前だが,EP4〜6の登場人物で本作にも登場するのは,ソロ,大猿のチューバッカ,ソロの悪友のランド・カルリジアンの3人だけである。他は本作独自の人物やロボット達で,馴染みはないが,自由に物語を膨らませる利点もある。辺境の惑星コレリアで暮らしていたハン・ソロと恋人のキーラは出国を試みるが,失敗し,2人は引き裂かれて,ソロだけが脱出する。その後,彼女とは再会するが,攻防,裏切り,再逆転等々敵味方が交錯するが,物語展開としてはさほど複雑ではない。大方のSWファンのお目当てはこの物語の行方ではなく,ソロとチューバッカがいつからコンビを組み,いかにしてミレニアム・ファルコン号をいかにして手に入れるかだろう(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 若きハン・ソロとチューバッカ。いつこのコンビでの操縦が見られるかが楽しみの1つ。
 
 
  監督はフィル・ロード&クリス・ミラーと発表されていたが,降板劇の結果,人選で色々あってロン・ハワードに落ち着いた。『バック・ドラフト』(91)『アポロ13』(95)等のヒット作の上に,『ビューティフル・マインド』(01)でオスカー監督になったベテランだが,彼がSWシリーズのメガホンとはちょっと意外な気もした。
 若き日のハン・ソロ役に抜擢されたのは,これが初主演となるオールデン・エアエンライク。まだ28歳のこれからの俳優で,本作で一躍名前が知られることだろう。精一杯の演技で好感は持てるが,ハリソン・フォードには全く似ていないのが残念だ。恋人キーラ役は,『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15年8月号)『世界一キライなあなたに』(16年10月号)のエミリア・クラーク。これまでの可愛い一辺倒の役から,本作ではかなりしたたかな女性を演じている(写真2)。彼女に関して,後で再度論じることにしよう。
 
 
 
 
 
写真2 エミリア・クラーク演じるキーラは,かなりしたたかな女性
 
 
  チューバッカの着ぐるみの中身は,前作『EP8 最後のジェダイ』からフル起用された身長203cmのフィンランド人ヨーナス・スオタモが続投している。EP5,EP6 でビリー・ディー・ウィリアムズが演じたランド・カルリジアン役には,コメディアン&ラッパーのドナルド・グローヴァーが抜擢された。他の助演陣では,ウッディ・ハレルソン,ポール・ベタニー,タンディ・ニュートンらが起用されている。
 キャスティングでの最大の不満は,ハリソン・フォードが全く登場しないことだ。せめて,回想シーンでいいから,父親か祖父役でカメオ出演させて欲しかったのは全世界SWファンの願望だろう。リブート版『スター・トレック』(2009年6月号)は,オリジナル・シリーズの象徴的存在であったレナード・ニモイを登場させ,新旧Mr.スポックを対面させたではないか。俳優としての格が違う,ギャラが高額は理由にはならない。『ブレードランナー 2049』(2017年11月号)に老デッカード刑事で出演したH・フォードを,膨大な製作費をかけられるSWシリーズが起用できない訳がない。チューバッカに「ハンをよろしくな」と託すセリフでもあれば,最高ではないか。彼の再登場があるなら,それだけでSWファンは映画館に足を運んだはずである。
 おっと,これでは応援にならないので,当欄の視点での見どころを語るとしよう。
 ■ 映画の前半は,美術造形も物語の進行も,レトロな感じを出そうとしていることが感じられた。EP4より前,帝国軍が支配する暗黒の時代であり,若いカップルが逃げだしたくなる辺境の惑星コレリアなら,暗く荒んだ画調になるのは当然だ。ソロだけ脱出した後も,ギャングと争い,アウトローとなるゆえに明るく楽しい話ではない。様々な戦闘シーンは,SWシリーズ中の第1次世界大戦というべきタッチで描かれている。この世界観を貫かれていて,美術班の仕事は成功していたと思う。その分,地味な印象を与えてしまうのは止むを得まい。
 ■ お目当てのミレニアム・ファルコン号は,しっかり,たっぷり登場する(写真3)。映画中での大半は,まだランドの所有物であるが,ソロが操縦指導する形で惑星間を縦横に飛び回るからだ(写真4)。チェイス・シーンもかなり迫力があった。独特の飛翔スタイル,宇宙空間でのワープはお馴染みの光景で,SWファンを喜ばせる。副操縦士役のL3-37は女性型ドロイドだ。チューバッカも当初の設定ではドロイドであったのに,EP4撮影直前に急遽ウーキー族に変更したというから,ここで原点帰りさせたのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 色々な形でファルコン号の勇姿が見られるのは嬉しい
 
 
 
 
 
 
 
写真4 ハン・ソロの操縦指導を受けるミレニアム・ファルコン号の持ち主ランドと相棒のL3-37
 
 
  ■ 本作の造形物の最大の目玉は,このL3-37だ。ウエストがくびれているし,上腕部もメカ丸出しであるので,C-3POのように中に人が入ることはできない。当然,フルCGで動きもつけたのだと思ったのだが,一部のシーンは声の出演者フィービー・ウォーラー=ブリッジが写真5上のようなスーツを着て演技したようだ。最終的にはフルCGで上書きされているが,この方がぎこちない動きを表現しやすかったのだろう。共演者もこの存在があった方が演技しやすい。

 
 
 
 
 
 
 
写真5 フルCGかと思ったが,こんな形でL3-37の挙動をキャプチャしている
 
 
  ■ 物語は普通の冒険アクション映画なのだが,随所でSWらしさを感じさせるのは,様々な形状の宇宙船や奇妙なクリーチャーたちがさりげなく登場するからだ。新たなデザインが大半で,いずれも水準以上の出来ではあるが,大きな製作費をかけているので,これくらいは当然だ。そんな中で最大のファン・サービスと言えるのは「ホロ・チェス」のシーンだ(写真6)。原点たるEP4ではチューバッカとC-3POが対戦していて,コマ撮りアニメで描かれていた。新シリーズのEP7ではフィンが1人で遊んでいたが,勿論CG製である。本作ではチューバッカとベケットがプレイしていて,当然CG製だが,何と,新しいキャラ(コマとなる生物)が2体追加されているのだという。
 
 
 
 
 
写真6 お馴染みのホロ・チェスのシーンが再登場
 
 
  ■ CG/VFXの最大の見どころは,雪山と列車のシーンだ。廃虚の要塞を観ただけで,相当美術班が気合いを入れてデザインしたと感じられる(写真7)。これに続く列車のアクション・シーケンスは見事だった。線路の上下に跨がる列車の形状もユニークであれば,そこで繰り広げられるアクションも一級品だ(写真8)。プレビズの威力を感じるシーケンスである。イタリアの山岳地ドロミーティで撮影したというから,そこで得た雪山のテクスチャと地形データをデジタル化し,CG製の列車と線路を描き加え,さらにソロやチューバッカの演技を重畳したのだろう。本作のCG/VFXの主担当は勿論ILMで85%以上を処理しているが,他にはJellyfish Pictures, Hybride, Raynault VFX, BLIND INC.の名があった。プレビズはお馴染みのThe Third Floor,3D変換はStereo D社が担当している。
 
 
 
 
 
写真7 雪山のシーンは美術班の技と意欲が感じられる
 
 
 
 
 
 
 
写真8 列車の形状が独創的でアクションも上々
(C) 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
 
 
  ■ ハン・ソロもさほど無頼ではなく,さしたる悪人も登場しない。ワクワク感はないが,終盤の緊迫感,盛り上げはさすがオスカー監督と思わせる演出だった。出演者の中で出色だったのは,キーラ役のエミリア・クラークだ。出番も多く,完全に主役を食っていた。『ターミネーター:新起動…』ではクロエ・グレース・モレッツに似ていると書いたが,本作ではレイチェル・マクアダムスにも似ていると感じた。やっぱり,可愛い。ハン・ソロはもういいから,キーラのその後を描いた外々伝が登場するなら,是非観てみたい。  
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