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O plus E誌 2019年3・4月号掲載
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   『ビリーブ 未来への大逆転』:法廷劇が得意な米国映画だが,歴史に残る裁判を描いている。史上初の男女平等裁判に挑んだ女性弁護士ルース・ギンズバーグが主人公で,彼女は現在も最高裁判事を務めている。物語は1950年代後半から始まる。貧しいユダヤ人家庭に生まれ,名門ハーバード法科大学院を首席で卒業するが,女性であるゆえに法律事務所には入れず,止むなく大学教授の職に就いた。主演は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)のフェリシティ・ジョーンズ。超秀才女子で可愛過ぎるのは似合わないと思ったが,実在の人物もなかなかの美形である。彼女を支える夫役のアーミー・ハマーも好演だ。母と娘の関係の描き方も心地よい。最後は予想通りの判決だったが,僅か200年前後で,こんな立派な国を作ったことは称賛に値する。その国が,良識ある国家の伝統も威厳もぶち壊しにする子供じみた人物を大統領を選ぶとは……。
 『ソローキンの見た桜』:2018年の現代の駆け出しの女性TVディレクターが,ロシア兵墓地の取材に行くことになり,そこから日露戦争時に四国・松山市にあったロシア兵捕虜収容所での出来事へと時代を遡る。日露合作で,大半は日本で撮られているが,外国映画のように感じる。画調を調整し,大正時代だと感じさせる描き方を採用している。負傷したロシア軍の将校ソローキンと彼を献身的に看病した日本人看護婦・武田ゆいの恋愛を描いた物語である。条約とはいえ,捕虜の扱いは丁重で,随分手厚い保護だなと感じる。イケメン将校と清楚な日本人女性が恋に落ちるのも当然と思えるが,それを見守る周囲の目も優しい。実話をかなり脚色しているようだが,結末のつけ方は見事だ。ミステリー調で,種明かしにも快感を覚える。現代と過去の主人公の2役をこなす主演の阿部純子は,『孤狼の血』(18)に続く本作で,さらにブレイクすることだろう。
 『エマの瞳』:久々にイタリア製の恋愛映画を観た。四十男のテオは広告代理店勤務で,チャラ男で典型的なプレイボーイ。一方,思春期に視力を失ったエマは,離婚歴もあるが,整体師として自立した生活を送っている。恋人グレタがいながら,エマに一目惚れしたテオは猛烈なアプローチをかけ,やがて恋仲に。この2人の会話が心地よい。ある日,グレタとエマが鉢合わせしたことから生じる展開は,恋愛映画の定番だが,その間を縫って,テオと疎遠だった故郷の家族との関係修復,エマが弱視の少女ナディアを見守る物語も進行する。監督はイタリアの名匠シルヴィオ・ソルディーニで,テーマは「心の目で見ること,見えることの意味」だ。主演のヴァレリア・ゴリノは,30年前の『レインマン』(88)でトム・クルーズの恋人役を演じた女優だが,現在52歳とは思えぬ美しさで,テオならずとも魅了される。
 『レゴ(R)ムービー2』:ブロック玩具LEGOの世界をフルCGで描いた『LEGO(R)ムービー』(14年4月号)の続編で,スピンオフ作品を含めると4作目になる。短期間でこの製作ペースは,それだけ世界中で愛されている証拠だろう。一層カラフル。大掛かりになっているが,もはやCG技術的に語ることはない。時代設定は前作の襲撃事件から数年後で,ブロックシティは荒廃していた。相変わらずお気楽な主人公のエメットの前に宇宙人が現われ,大切な仲間のルーシーやバットマンを銀河系のある惑星へと連れ去ってしまう……。ついに冒険の舞台は宇宙空間だ。コメディセンス抜群のシリーズで,大人が観ても楽しいのに,日本語吹替版ではその雰囲気が伝わって来ない。名うての声優たちが,幼児番組口調で話すので,尚更そう感じる。欧米ではIMAX 3D版まで公開されているというのに,本邦では完全にお子様映画扱いなのが残念だ。
 『記者たち 衝撃と畏怖の真実』:表題に該当するのは,中堅新聞ナイト・リッダー 社ワシントン支局の4人の記者である。2001年のイラク戦争開始までの政治情勢,本当に大量兵器はイラクにあるのかを探る記者たちの動きを描く社会派実録ドラマだ。メジャー誌が大統領府の主張に迎合した時に,同紙だけが真実を伝え続けたという。となると,『大統領の陰謀』(76)『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)級の力作を期待してしまう。監督は『スタンド・バイ・ミー』(86)の名匠ロブ・ライナー。本作では自ら支局長役を演じるほどの熱の入れようで,俳優陣も豪華絢爛だ。その意欲に反して,物語が平板で,盛り上がりも感動もなかった。脚本が今イチで,副題が大げさ過ぎる。この戦争は米国の汚点であるが,当時,世界中が大量破壊兵器の存在を疑っていたので,さほどの「衝撃の真実」ではない。後述の『バイス』を観たら,副大統領の実力の前では,この新聞社の主張など一たまりもないことが理解できる。
 『映画 少年たち』:「記者たち」に続く「少年たち」は,イケメンのアイドル達で,全員ジャニーズ事務所の所属である。1969年の初演から実に半世紀,創始者ジャニー喜多川が企画・構成・総合演出を手がけた伝説の舞台ミュージカルの映画化だという。となると,歴代男性アイドル・グループの勢揃いかと勝手に期待(?)したが,出演者はぐっと小粒で,東西ジャニーズJr.グループから17人が集うに過ぎない。物語は,少年刑務所内の出来事で,強圧的な新看守長の横暴に耐えかねた少年たちがある行動に出る…。演技下手が大半なのは予想通りだったが,コーラスやダンスはさすがだった。これは舞台向きの台本であって,映画としては脚本が弱い。高齢のジャニー氏に捧げた単なる身内の記念映画に過ぎず,余程のファン以外は観る必要はないと感じた。
 『リヴァプール,最後の恋』:切ないラブストーリーだ。若い男女でも,熟年カップルでもない。往年の大女優と駆け出しの若い男優の恋物語で,1986年に出版された英国の舞台俳優ピーター・ターナーの回顧録に基いている。1950年代のモノクロ映画で活躍し,4度の結婚歴があるオスカー女優のグロリア・グレアムをアネット・ベニングが演じ,晩年の若い恋人ピーターをジェイミー・ベルが演じる。1979年から1981年秋までの短い期間だが,2人とも当時の当人たちと同年齢だ。親子ほどの年齢差があるこのカップルの恋が不自然に感じないのは,アネット・ベニングがチャーミングで,この女優になり切った名演技のなせる技だろう。ピーターを見守る両親の優しい眼差しと温かな家庭も印象的だ。2人は一旦別れるが,末期癌に苦しみながら,再びこの家庭に救いを求めてきたグロリアの胸中を察することができる。それゆえ,別れのシーンが尚更切ない。
 『バイス』:原題の『Vice』は「副大統領」と「悪徳」の掛け言葉だ。ブッシュJr.政権下の「陰の大統領」として権力を握ったディック・チェイニーを描いた社会派映画である。なのに,コメディタッチで,エンタメとしても上々の出来映えだ。『マネー・ショート』(15)の監督と主演のコンビ再現で,前回は経済界,今回は政界が対象だが,徹底取材で事実に忠実だと思われる。でっぷりした副大統領役がクリスチャン・ベールとは驚いた。これが,あのバットマンか?30kg減量した激ヤセの『マシニスト』(04)と同一人物とは思えない。本作では,18kg増量+毎日5時間のメイクで化けたという。リン夫人,ブッシュ,パウエル,ライス等々,皆そっくりさんで嬉しくなる。唯一ラムズフェルドだけが似ていない。爆撃,爆発等のVFXと実録ニュース映像とのミックスが巧みで,大統領執務室や他のホワイトハウスのセットも見事な出来映えだ。圧巻は,大統領にイラク侵攻を決断させる下りである。現在78歳の彼が現役なら,今のトランプ大統領をどう操るのだろうか?
 『マックイーン:モードの反逆児』:当欄が好んで取り上げるファッション・デザイナーの人物と業績を描いたドキュメンタリーだが,これほど個性的な人物は初めてだ。人柄も作品も,人生自体もである。その名は,リー・アレキサンダー・マックイーン。英国の労働者階級の出身で,プライベート・ブランドを持つとともに,名門ジバンシィのクリエイティブ・ディレクターとして成功を収めた。彼が独自ブランドのショーで見せた作品は,まさに奇抜な前衛アートだが,同時に商業的にも成功していたという。次第にドラッグ漬けとなり,敬愛した母の死を受け容れられず,その葬儀の前日に40歳の若さで自らの命を絶った。彼の生涯も波乱に満ちているが,このドキュメンタリーのタッチも極めて独創的だった。支援者・友人・家族へのインタビューで綴るスタイルは一般的だが,全体はドラマを観たかのような気分にさせてくれる。まるで魔法のような実録映像だ。
 『希望の灯り』:米英と続いた後はドイツ映画だ。旧東ドイツ生まれの作家クレメンス・マイヤーの短編小説を,同じく旧東ドイツ出身のトーマス・ステューバー監督が映画化し,ベルリンの壁崩壊後,急速な民主化と西側資本の進出で社会的に置き去りにされた人々の苦悩を描いている。舞台となるのは,ライプツィヒ近郊の田舎町の巨大スーパーマーケットだ。殆どがその倉庫内と店舗での出来事で,自宅が少々出て来るに過ぎない。いきなり倉庫内で「美しき青きドナウ」が鳴り響くシーンで始まる。『2001年宇宙の旅』(68)を連想させるが,倉庫内が労働者らの宇宙を意味しているのだろう。「G線上のアリア」も印象的だが,会話の中には沈黙が目立つ。この暗さ,単調さ,退屈さは意図的な描写だろう。主人公は在庫管理担当のクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)で,年長の女性社員マリオン(ザンドラ・ヒュラー)に恋する。上記『ソローキンの…』と同様,訳アリのこの2人を見守る周りの気配りが心優しい。
 『12か月の未来図』:次はフランス映画で,パリ市内のエリート高校から,郊外の移民中心の中学校に1年間限定でしぶしぶ赴任した教師(ドゥニ・ポダリデス)が,荒廃したクラスを建て直す物語だ。中でも最も問題児の少年セドゥに寄り添い,彼を立ち直らせる。基本骨格はよくある学校ものだが,この教師は,森田健作のような熱血漢でも武田鉄矢のような親しみやすいタイプでもない。禿げた中年オヤジだが,教養ある紳士で,生徒にしっかり向き合う姿がいい。生徒側だけでなく,厄介者は退学にすれば済むと安易に考える教員側にも問題ありと訴えている。改めて,教育問題の難しさ,移民問題の根の深さを感じさせられる。本作が長編デビュー作となるオリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル監督は,取材のために,2年間中学校に通ったという。若い美人教師クロエとの間の淡い恋心の応酬を描いたパートが,一服の清涼剤となっている。いいね!
 『芳華-Youth-』:今度は中国映画で,監督は『女帝[エンペラー]』(06)『唐山大地震』(10)の名匠フォン・シャオガン。監督自らも所属した軍の歌劇団「文工団」の若い男女が激動の時代を生きる様を描いている。物語は,天安門事件,唐山地震があった1976年から始まり,中越戦争が経て,文工団が解散する1979年までを描き,後日談として1995年までを含んでいる。個人の人格否定の文化大革命,制限だらけの統制経済下の生活には,嫌悪感を通り越して,「国家」とは何なのかの疑問すら感じる。そんな中での清々しい青春ドラマ,堂々たる人間ドラマだ。2時間15分の映画だが,もっと長い充実した大河ドラマを観た思いがする。時代の流れを描いた正統派の映画だが,欠点は美女揃いで,しばらく誰が誰だか分からなかった。一方,模範兵・劉峰役の男優には見覚えがある。『空海 ―KU-KAI―』(18) で白楽天を演じた中井貴一似のホアン・シュエンだった。
 『魂のゆくえ』:舞台を米国に戻し,NY州北部の教会に所属する真面目な牧師の傷つく心,静かな怒りを描いた作品である。名作『タクシー・ドライバー』(76)『レイジング・ブル』(80)の脚本を手がけたポール・シュレイダー監督自らの体験に基づき,50年来の構想の脚本を映像化したという。トラー牧師を演じるのはイーサン・ホーク。若い頃は,女たらしのチャラ男,下品なヤンキーがはまり役で,最近は軽いが善良な父親役が似合っていた。随分老けて,終始深刻な面持ちで臨む牧師役は全くのイメージチェンジの好演だ。オスカー・ノミネートは逃したものの,多数の映画賞で主演男優賞を受賞したのも頷ける。罪悪感を背負って生きる牧師が,教会が抱える問題から信仰心が揺らぐ過程を見事に描いている。「現代アメリカの宗教の姿を正しく描いた映画」だというが,このテーマは好きになれなかった。公害垂れ流し企業を悪者にする姿勢も,時代錯誤に感じた。
 『荒野にて』:原題は『Lean on Pete』。貧しい父子生活を送っていたが,暴行を受けた父親が死去し,孤児となった15歳の少年チャーリーが連れ歩く競走馬の名前である。配給会社は,邦題をつけるのに苦労したことだろう。『さざなみ』(15)のアンドリュー・ヘイ監督が紡いだ極上のロードムービーだ。唯一の身寄りの伯母を探して,孤独で傷ついた少年と成績不振で殺処分になる運命の競走馬の歩む旅路が痛々しい。米国中西部の貧民層や殺伐とした荒野の描写も印象的だ。途中,無銭飲食,住居不法侵入,軽い万引き等の軽犯罪は犯すが,決定的な悪事に染まらなかったことが救いとなっている。ネタバレになるので書けないが,誰もが旅の行方,結末が気になることだろう。最終的に彼が辿り着いたのは,ワイオミング州のララミー市。中高年以上は,かつての人気TV番組『ララミー牧場』の名前を思い出すと共に,この結末にほっとするとだけ書いておこう。
 『マローボーン家の掟』:『永遠のこどもたち』(07)のJ・A・バヨナ監督と脚本担当だったセルヒオ・G・サンチェスが,それぞれ製作総指揮,初監督として臨むサスペンス・スリラーである。時代は1969年,舞台となるのは米国メイン州の古い大きな屋敷で,母親と4人の子供たちが引っ越して来る。もうこの不気味な屋敷を見ただけで,身の毛もよだつ。母親は病死するが,4人はそれを周りには伏せ,「5つの掟」を交わす。物語の進行とともに,凶悪殺人鬼で脱獄囚の父親を殺して屋根裏部屋に隠したことが判ってくる。止むを得ず「掟」を破った後に,不思議な現象が続き,やがて屋根裏部屋から物音が聞こえて来る……。となると完全にホラーモードなのだが,やはり本作はスリラーと言った方が正しい。結末は書けないが,よくあるサプライズ・パターンの1つとだけ言っておこう。映画通なら,そのパターンが何であるかを想像して楽しむ映画である。
 『アガサ・クリスティー ねじれた家』:こちらも大きな屋敷が出て来るが,大富豪とその一族が住む邸宅だ。外観も内装も豪華で,目の保養になる。原作はA・クリスティーのミステリーだから,当然舞台は英国で,最後には名探偵が殺人犯を見つけ出して種明かしをする。ただし,ポワロやミス・マープルではなく,探偵役は元外交官のチャールズ・ヘイワード(マックス・アイアンズ)だった。1949年の作だが,映画内での想定は1960年代のようで,大富豪が毒殺され,容疑者は住人の家族と家庭教師,ナニーを含む11名で,全員に殺害動機がある。クリスティー自身の自信作2作の内の1作というだけあって,本格派ミステリーの範疇に入る。本格派はフェアプレイゆえに,クリスティー通なら犯人は大体当たる(筆者は原作未読だったが,やはり予想が的中した)。映画的演出も悪くない。フィルム・ノワール風に描いた上に,終盤にはカーチェイス・シーンも登場する。
 『バースデー・ワンダーランド』:筆者の苦手な和製セル調アニメだが,『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(15)の原恵一監督作品なので食指が動いた。当たりだった。やはりこの監督の演出力は秀逸だ。原作は柏葉幸子作の児童文学「地下室からのふしぎな旅」で,文字通り骨董屋の地下室を潜ると,別世界が広がっていた。錬金術師や魔法使いが登場し,最後は王子様と主人公の少女アカネが……。と聞くと,どこにでもある童話だが,物語の骨格がしっかりした正統派のファンタジーだとも言える。多数のアニメ制作スタジオが参加した力作であるが,表現力の限界を感じた。揺れる吊り橋,モフモフの羊,魔法が解けての変身,しずくきり後の大きな雨雲等々は,絶対に3D-CGで描くべきだ。ワーナー・ブラザース配給なのだから,『ハリポタ』や『ファンタビ』並みのVFX大作として制作していれば,世界中に通用する一級品のファンタジー映画になっていたと思う。
 『ザ・フォーリナー/復讐者』:ジャッキー・チェン主演の最新作だが,中国/香港映画ではない。英国映画で,共演は元007のピアース・ブロスナンという珍しい組み合わせだ。もう何十本も彼の主演作を観て,当欄でも10数本を取り上げているが,こんなジャッキーは初めてだ。ロンドンで中華料理店を経営する中国人役だが,娘をテロでなくし,悲嘆にくれた沈んだ顔で登場する。コミカルな演技は全くなく,定番のNG集もない。ただの老人と思いきや,元は軍隊の特殊部隊出身の凄腕で,爆発物の扱いに長けている。犯人への復讐を誓い,知略と戦闘能力でテロリスト達と渡り合う。P・ブロスナンは北アイルランドの副首相役で出番も多く,存在感も抜群だ。監督は『007/ゴールデンアイ』(95)『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号)のマーティン・キャンベル。ジャッキー,テロリスト集団,ロンドン警視庁の三つ巴の攻防を楽しませてくれる。
 
   
     
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