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O plus E 2019年Webページ専用記事#2
 
 
シャザム!』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月19日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2019年3月29日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  アメコミもので,コメディ・センスは過去最高  
  またまたアメコミ・ヒーローものだ。これだけ次々とスーパーヒーローの実写映画大作が押し寄せて来ると,誰がどんな超能力を有し,誰とチームを組んで悪漢どもと戦うのか,分からなくなってくる。ディズニー&マーベル・スタジオ組が生み出すマーベル・シネマティック・ユニバーサル(MCU)と称する作品群は既に21作に達し,まもなくMCU22作目『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開される。何人のスーパーヒーロー達が集結するのか,すぐには数えられない。これに対する本作は,ライバルのワーナー&DCコミックス側の作品だから,まだ覚えやすい。本作は,由緒あるスーパーマン,バットマンに加え,ワンダーウーマン,アクアマンらが活躍する「DCエクステンデッド・ユニバース」の7作目に当たる。
 本作の試写に臨む前に,原作コミックに登場するキャラクターに関して調べてみた。ネット上からすぐに見つかったのは,コミック誌の表紙(写真1)の姿だ。ヒーロー・スーツの色は違えど,ルックスも筋肉隆々たる体躯もスーパーマンそっくりである。実写版の本作でもほぼこのコスチュームで登場するようだ(写真2)。1939年に創造され,1940年からWhiz Comics誌に初登場したキャラらしく,その当時のコミック誌の表紙は写真3である。写真1より少し素朴な絵だが,やはりスーパーマンそっくりだ。何とこの人物のことを「Captain Marvel」と記しているではないか! 先月紹介したばかりの『キャプテン・マーベル』(19年3・4月号)は,青と赤のスーツで,女性であったはずだ。いやいや,彼女は3代目で,初代と2代目は男性だったと思うが,プロ野球やサッカー・チームじゃあるまいし,そんなに簡単にライバル誌間でヒーローが移籍するのだろうか?

 
 
 
写真1 DCコミックス発行のコミック誌 写真2 本作のポスター。胸のV字部が黄色に変更。
 
 
 
写真3 1940年代に発行されたWhiz Comics誌の表紙。「Captain Marvel」と書かれている。
 
 
  事情は少し込み入っていて,写真3(左)のヒーローの普段の姿は,向かって右側のビリー・バットソン少年で,「Shazam!」という呪文で左の大人のスーパーヒーローに変身するそうだ。彼が「Captain Marvel」らしい。ルックスも超能力もかなり似ていたため,DCコミックスから「スーパーマンの盗作」と訴えられ,1950年代にWhiz Comic誌は廃刊に追い込まれたとのことである。訴えた側のDCコミックスが,この原案の版権を1970年代に取得した。同じ会社なら,どれだけ似ていても,自社内で黙認すれば良いだけで,弟分扱いにもできる。ところが,その後マーベル・コミックが勢力を増し,社名登録もしていたので,変身後のヒーロー名に「Captain Marvel」を使うことは止め,呪文名の「Shazam!」をヒーロー名としても使うように変更したそうだ。よって,マーベル・コミック側の「Captain Marvel」は,独立して誕生したヒーロー/ヒロイン達である。
 DC側でヒーロー名も「シャザム」にしたのはいいが,ビリー少年にこの能力を与えた魔法使いも「魔術師ジャザム」と呼ばれていた。あー,ややこしい。整理すると,呪文「Shazam!」(発音は,「シャザァーム!」と延ばす感じ)を唱えるとビリー少年は超人シャザムに変身し,再度同じ呪文で元の少年の姿に戻る。元々「SHAZAM」とは,写真3(右)の下部に描かれているように,ギリシャ神話に登場する6人の神「ソロモン(S)」「ヘラクレス(H)」「アトラス(A)」「ゼウス(Z)」「アキレス(A)」「メルクリウス(M)」の頭文字のことだった。変身とともに彼らの叡智,不死身の体力,神速での飛行能力等々が備わるという訳である。パワーはスーパーマン並みで,地球上最強とのことだ。なるほど,6つの超能力の略称ならば,それを与えた魔術師も与えられた超人もShazamなのは,何とか納得できる。  本作の監督は,『アナベル 死霊人形の誕生』(17年10月号)のデビッド・F・サンドバーグ。アメコミ大作のメガホンは初めてである。変身前後で少年から大人の超人に変わるのだから,俳優としては2人1組での主人公となる。この点が他のヒーロー達と最も違う。変身後の中年のシャザムを演じるのは,ザカリー・リーヴァイ。あまり馴染みがないが,ミュージカル舞台やTVドラマで活躍してきた俳優らしい。「見た目はオトナ,中身はコドモ」のキャッチコピーが示すように,本作は徹底したコメディ映画であり,シャザム役の俳優のルックスはスーパーマンとは全く似ていなくて,少し間の抜けた顔立ちで登場する。
 もう一方のビリー少年役は,アッシャー・エンジェル。子役出身で,こちらもミュージカル舞台やTVシリーズで育ってきた有望株らしい。7つの大罪(強欲,怠惰,憤怒,色欲,退職,傲慢,嫉妬)のすべてを備えた最強のヴィラン(悪漢)は,物理学者のサデウス・シヴァナ博士で,『キングスマン』シリーズのマーク・ストロングが配されている。多くの作品で,悪役,脇役を演じているので,スキンヘッドで個性的な顔を見れば,すぐに思い出すはずだ。本作でも,存在感のある悪役を見事に演じている。
 物語は1974年のニューヨークから始まる。選ばれた子供が魔術で変身できること等,物語の前提となる解説が語られる。少年サデウス・シヴァナはこの力を授かるが,7つの大罪に犯され,次第に悪の道に染まることも描かれる。本作の中で,このオープニング・シーケンスだけが少し暗い。
 そして,舞台は変わって現代のフィラデルフィアとなる。15歳の孤児の少年ビリー・バットソンは,里親の家から逃げ出し,実の母親を探している。ふとしたことから,彼は魔術師シャザムに「正義の使徒。世界の救世主」と認められ,超人シャザムに変身する力を与えられる……。
 ここからは全くのコメディ・タッチで,ギャグ,パロディのオンパレードだ。おふざけ度では,これまで『デッドプール』(16年6月号)が群を抜いていたが,同シリーズが下ネタ,楽屋オチを多用しているのに対して,本作の方が上品で,コメディ・センスが秀逸である。とにかく明るく,楽しい。あの『ダークナイト』シリーズを生み出したワーナー・ブラザース作品とは思えない,思い切ったイメージチェンジの企画である。それだけ,時代を先取りしているとも言える。主人公が思い悩む重苦しいドラマや,CGで描いた派手なだけのラストバトルは,もはや観客の心を掴まないことに気付いたのだろう。
 以下,当欄の視点からの論評である。
 ■とは言ってはみたものの,いざ本稿を書くに当たって,CG/VFX的には何を語れば良いのか戸惑ってしまった。全編でVFXシーンはたっぷりあるのだが,さほど斬新な使われ方はなかったし,特に印象に残るシーンもなかったからである。加えて,あまり目立ったスチル写真も公開されていない。強いて言えば,女性がばらばらになったかと思えば,ドアの向こうが別世界で存在したり,地下鉄が暴走して別次元の世界に入って行くシーン等で,少しワクワクして来る程度だ。映画全体が溌剌としていたので,VFX的な冒険が少なかったことは,あまり気にならなかったとも言える。
 ■ 超人シャザムの活躍は,コンビニで強盗と遭遇するシーンから始まる(写真4)。最近の定番の1つで,ある種のパロディとも言える。写真5 のようなシーンは,スーパーマンのオマージュだろう。ここで重要なのは,少年ビリーの親友のフレディが根っからのスーパーヒーロー・オタクだということだ。シャザムは,見た目はオッサンでも,心は全くのガキだから,フレディに超能力を何度もひけらかす(写真6)。このシーンが頗る楽しい。通常のスーパーヒーローものなら,秘かに自らのパワーの威力を自覚する場面が見ものであり,市井の人々を助けるシーンが痛快だが,それが本作の場合,シャザムとフレディの掛け合い漫才のようなやりとりになっている。ハリウッド映画で毎度お馴染みの家族愛よりも,友人達との仲間意識を重視しているのも好感が持てた。
 
 
 
 
 
写真4 最近定番のコンビニのシーン 
 
 
 
 
 
写真5 これはどう見ても,スーパーマンへのオマージュ 
 
 
 
 
 
 
 
写真6 スーパーヒーロー・オタクの親友フレディに自慢して見せる
 
 
  ■ 存在感という意味では,シヴァナ博士の方が上だ(写真7)。注目はその右目で,ここから7つの大罪の相当する魔物が続々と登場する。この魔物達が醜悪そのもので,様々な作品で登場した悪役や怪獣の造形の集大成のような感じがする(残念ながら,その画像が提供されない)。邪悪に見えながら,コメディ基調でいずれも憎めない存在だ。ラストバトルは,当然,シャザムとシヴァナ博士の一騎打ちだが,テンポが良く,くど過ぎず,快適である(写真8)。少しネタバレになるが,この戦いでシヴァナ博士が死んでしまうことはない。既に続編が企画されているようだから,彼も再登場することだろう。
 
 
 
 
 
写真7 同等のパワーをもつシヴァナ博士。右目に注意 
 
 
 
 
 
写真8 ラストバトルは,勿論2人の一騎打ち
(C) 2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
 
 
  ■ 本作のCG/VFXの主担当は,またまた英国のMPC社だった。現在のVFX業界で,主要大作の取扱量はダントツNo.1である。副担当はMr.Xで,その他に Rodeo FX, Digital Domain, Rise VFX等が参加している。プレビズはProof社,2D→3D変換はDNEG社の3D部門である。英国の大手DNEG社は,VFXの主要パート制作に参加せず,最近創設された3D部門が単独でしっかり新ビジネスを始めていることを再確認した。
 
 
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